蜂がブンブン飛び交う“日本一危険な祭り”に参加して最高にウマい「蜂の子料理」を味わってきた

蜂が飛び交うヘボ祭りの会場へ

ヘボ祭りの会場は、標高464メートルの山頂に位置する「くしはら温泉 ささゆりの湯」。敷地内には「地蜂(ヘボ)友好の碑」もあり、蜂の子文化が根付く土地であることがわかる
ヘボ祭りの会場は、標高464メートルの山頂に位置する「くしはら温泉 ささゆりの湯」。敷地内には「地蜂(ヘボ)友好の碑」もあり、蜂の子文化が根付く土地であることがわかる

 当日は天気にも恵まれ、11月とは思えぬほど気温が髙かったため、「コレはさぞかし蜂が元気なのでは……」と、頭をよぎる少々の不安。なぜならこの祭りでは、ヘボ(蜂)が会場を自由に飛び回るから。到着して早々に開会式を見ているそばから、自分の周りに飛び交う多数のヘボが目視できます。ああ、コレが巷で言われている「日本で一番危険な祭りか」と、早くも実感させられます。

会場のそこここに「蜂アレルギーの人は近づかないように」という注意喚起の看板が。ヘボは毒性は弱いものの、複数回刺されればアナフィラキシーショックが起こる可能性が高まります
会場のそこここに「蜂アレルギーの人は近づかないように」という注意喚起の看板が。ヘボは毒性は弱いものの、複数回刺されればアナフィラキシーショックが起こる可能性が高まります

 開会式の挨拶では、こんなコメントも飛び出しました。

「捕ることも、育てることも、食することも、刺されることも含めて、ヘボ文化の継承です」

 刺されることも文化! 「刺されても仕方ないか」と覚悟をキメて臨んだものの、こう言い切られると、ちょっとひるんでしまいます。

ヘボは毒性が弱く、おとなしい。仲間の口元にもとまったものの、静かにはらうと飛び去ってくれました。今回の仲間内で刺されたのは、積極的にハチにからんでいくユーチューバーのスズメバチ仮面ヒロポン氏だけであった
ヘボは毒性が弱く、おとなしい。仲間の口元にもとまったものの、静かにはらうと飛び去ってくれました。今回の仲間内で刺されたのは、積極的にハチにからんでいくユーチューバーのスズメバチ仮面ヒロポン氏だけであった

 ヘボが飛び交うも、祭りの参加者は慣れっこといった雰囲気。「ハチが来た!」などと騒いでいる者がただの一人もいないのがスゴい。さらに、ヘボ料理販売のテントに、朝9時の時点ですでに長蛇の列が発生していたのも、またまたスゴい。

 この祭りに来て、ヘボを食べないという選択はないのでしょう。昨今(昔から?)何かと嫌われがちな昆虫食ですが、この地においては、昆虫食への愛しか感じられません。

ヘボ料理を買い求める列に、ヘボ料理への熱い期待がうかがえる。この広々とした空間は「くしはら温泉 ささゆりの湯」併設のグラウンドゴルフ場。隣にはオートキャンプ場もある、充実のレジャースポットでもある
ヘボ料理を買い求める列に、ヘボ料理への熱い期待がうかがえる。この広々とした空間は「くしはら温泉 ささゆりの湯」併設のグラウンドゴルフ場。隣にはオートキャンプ場もある、充実のレジャースポットでもある

 さて、いよいよ祭り名物「ヘボ五平もち」の出番! 恵那市に伝わる「くるみごへいたれ」に串原地区のヘボを混ぜてある、絶品の名物料理です。

炭で炙られる祭り名物「ヘボ五平もち」
炭で炙られる祭り名物「ヘボ五平もち」

 この「くるみごへいだれ」とは、醤油にくるみ、ごま、ピーナッツをふんだんに加えて作る伝統の味。もとは地元岐阜県東濃地方に伝わる「わらじ五平もち」のたれを昭和の時代に商品化したもの。そこへ、ヘボを加えるという贅沢さ! ヘボ入りのたれは、各家庭でも独自に作られることもあるという郷土の味でもあります。

ヘボ五平もちを販売するのは、ヘボ食文化を引き継ぐ「へぼがーるず」
ヘボ五平もちを販売するのは、ヘボ食文化を引き継ぐ「へぼがーるず」

 気になるヘボ五平もちの味はというと、昆虫食ビギナーにもおすすめしたくなる美味しさです。たれに混ぜ込んであるものの、ヘボの存在感はごくごくわずか。子どもからお年寄りまでが楽しめる、鉄板の甘辛味。

念願のヘボ五平餅をいただきます! わらじ型の五平餅はボリュームたっぷり。1本で十分、朝食になってしまう
念願のヘボ五平餅をいただきます! わらじ型の五平餅はボリュームたっぷり。1本で十分、朝食になってしまう

 米をつぶしてふわっとまとめてあるもちがおなかに優しく、炭火で炙った香ばしさに、食欲を刺激されまくりです。あっという間に1本ペロリ。ヘボがブンブン飛び交う中でほおばると、「お仲間を食ってゴメンよ……」という、食物連鎖の罪悪感がほんの少し湧き出てきますが、それもまた味わいのスパイスかも。

ヘボ料理定番の「ヘボごはん」と「甘露煮」(しょうゆと砂糖で煮詰めたもの)も、ヘボ五平餅と同じく長蛇の列。ひと通り見学してから会場の隅で味わっていると「私買えなかったわ~」と残念そうなご婦人の声も
ヘボ料理定番の「ヘボごはん」と「甘露煮」(しょうゆと砂糖で煮詰めたもの)も、ヘボ五平餅と同じく長蛇の列。ひと通り見学してから会場の隅で味わっていると「私買えなかったわ~」と残念そうなご婦人の声も

 ヘボの味わいをしっかり堪能したいなら、甘露煮を食べない手はありません。小エビを甘辛く煮つけたような味わいに、「これはお酒が欲しくなりますね~」と同行のスズメバチ仮面ヒロポン氏。

「成虫の外皮のパリッとした食感と幼虫のクニャリとした歯触りが心地よく、口にいれた瞬間は甘露煮の甘じょっぱくて香ばしい味がガツンと来たあとに、ヘボ独特の甲殻類とナッツを合わせたような風味がきます」

 さすが、ハチマニアの食レポ。ヒロポン氏が言うように、蜂の子(ヘボ)は独特の風味があります。それが魅力であったり、人によっては苦手だったり。

(左)甘露煮と(右)へぼごはん
(左)甘露煮と(右)へぼごはん

 しかしこのヘボごはんは、配合のバランスが控えめに言っても最高。出汁をきかせたごはんに2割くらいの分量でヘボを混ぜこむことでいい塩梅に香りがフワッと広がり、ハチのクセが逆にいい仕事をしています。ヘボが具というより、調味料的な印象です。まさに黄金比。昆虫食歴15年にして本当に美味しいヘボごはんに出会えたように思えます。

 胃袋をつかまれる祭りというのは、満足度がハンパないですね。「虫! キャ~!」という声が聞こえず、来場者がごく普通に食べている環境も、特筆すべきポイントでしょう。

 さて腹ごしらえをしたら、ここからが本番。食材の「ビフォア」をじっくり拝見しなくては。