日本酒ツウが通う酒場『ふくべ』(八重洲)で絶品「くさや」を味わってきた

日本酒ツウが通う酒場『ふくべ』(八重洲)で絶品「くさや」を味わってきた
食楽web

 日本橋と東京駅のほぼ中間。八重洲エリアは東京のど真ん中にも関わらず、昔ながらの風情を残す一角でもあります。その中でも、美味しい日本酒と肴が味わえる店として長い間愛され続けているのが『ふくべ』。

「創業は1939年(昭和14年)。だから今度で2度目の東京オリンピックを迎えられるんですよ」。と話すのは、2代目大将の北島正雄さん。現在は3代目の息子さんとともに店を切り盛りしています。

昭和の面影が残る店の外観。東京駅、日本橋駅ともに徒歩3分圏内。縄のれんが目印
昭和の面影が残る店の外観。東京駅、日本橋駅ともに徒歩3分圏内。縄のれんが目印

 店内に一歩入ると、飴色になった柱や天井に時間の流れを感じます。カウンターの奥には日本中から集めた日本酒の瓶が並び、カウンター手前には熱燗専用の“お燗器”が。カウンター席とテーブル席、そして1日1組限定、最大16名の予約宴会席が2階にあります。

カウンターの奥には大きな4斗樽が。4斗って…72リットル? 樽の生酒、これは飲みたい!
カウンターの奥には大きな4斗樽が。4斗って…72リットル? 樽の生酒、これは飲みたい!

 全国有名特選酒の店、なので日本酒は決定。ということで、オススメの肴は?「くさやですね」。くさや!? あの、くさや、ですか? 「新島のくさやです。今日は青ムロアジのくさやですよ」とにっこり微笑む大将。「創業時からうちの人気メニューですよ。くさやを食べたくてうちに来るお客さんもいらっしゃいます」。都内でも中々食べられるところのない「くさや」。ここで食べられるんですかっ! これは嬉しい。

 お酒は4斗樽に入っている「菊正宗」をぬる燗で。ワクワクしながら出来上がるのを待ちます。

「くさや」700円。ふわっと漂う独特のくさやの香り。焼きたてはふわふわ、旨味濃厚
「くさや」700円。ふわっと漂う独特のくさやの香り。焼きたてはふわふわ、旨味濃厚

 待つこと数分、目の前に来るまでに、出来上がったのが漂ってくる香りでわかるほど強烈な「くさや」。昔、御蔵島で食べて以来だなぁ~。その前は新島で食べたっけ、などなど、伊豆七島の夏の思い出を振り返りつつ一口。うまいっ。臭いけどうまいっ! 鼻に抜ける独特の香りを久々に感じつつ、濃厚な青ムロアジの旨みを楽しみます。

「特選 菊正宗」の熱燗700円。日本酒は550~700円
「特選 菊正宗」の熱燗700円。日本酒は550~700円

 口の中が「くさや」の旨みと香りでいっぱいになったところで、ぬる燗を一口。ほんのりですが樽の杉の香りも残ります。強烈な「くさや」をふわっと流してくれるような、程よい辛さとほんのり甘さ。どんな酒の肴でも寄り添ってくれる、日本酒ならではの懐の深さを感じます。

特製の漏斗とマスで受けてお燗に。漏斗もマスも、長年使ってきたいい色に
特製の漏斗とマスで受けてお燗に。漏斗もマスも、長年使ってきたいい色に

 ところで、どんなお客さんが多いんですか?「八重洲界隈で仕事をしている人はもちろんですが、中には親子2代、家族でいらっしゃる方もいますね。あとは東京出張のたびに寄っていただく方とか。長いことやっているでしょ。だから、最初はサラリーマン時代に来ていただいた方が、リタイア後も通ってくれるなんてこともね」。とニコニコ話す大将。1939年創業ということは、今年でちょうど80年。3代目の孫の世代まで通っているのではないでしょうか?

 長い間愛され続けている理由は?「お酒の種類、美味しさはもちろんですが、料理も喜ばれていますね」。アジやかますの干物、刺身、焼き物など魚介類を中心とした料理のほか、冷奴やきんぴらといった400円台のメニューもあり、1品&1燗でちょっとだけ、という時にも良さそう。

 なおかつ、日替わり限定500円メニューもあり、月曜日は「焼き油揚げのポン酢添え」、火曜は「刺身生はんぺん」など、月~土まで違うメニューが。さらに、シメに嬉しい「奥久慈玉子かけご飯」(450円)、「イカ刺し入りとろろ丼」(700円)なども。寒い時期には「おでん」(700円)も評判だそうです。

二代目大将の北島正雄さん。「うちの徳利はね、一合一勺入るの。大きめに作ってあるんですよ」
二代目大将の北島正雄さん。「うちの徳利はね、一合一勺入るの。大きめに作ってあるんですよ」

 話はそのうち、棚に並ぶ瓶のお酒に。北海道の「男山」から福岡の「三井の寿」、大分の「西の関」など、北海道から九州まで、厳選の日本酒が並んでいます。「お客様の中には、棚の端から端まで飲みたい、というお客様もいますね。だから瓶を並べる順番は変えないんですよ」。

 とは言っても、日本酒なので、1回来て4~5種飲む、なんてことは難しいのでは?「だから中々全種類到達できない。けれどお客様の中には、一旦全部飲まれて、もう一度最初から、という方もいらっしゃってね」。41種飲んで、さらにもう1周チャレンジ! それは時間がかかる挑戦ですね。この店が長いこと愛されている理由の一つかもしれません。

 カウンターで1人、静かに日本酒をのんびり味わうもよし、2~3人で来てテーブル席で会話を楽しみながら飲むのも良し。東京駅にも近いので、新幹線出張の帰りにちょこっと寄って、というのも良さそうです。

 予算2,000~3,000円あれば充分に飲んだ気持ちになれますよ。と大将。週の前半なら、比較的席も空いているとのこと。樽の杉の香りがほんのり漂う日本酒と通好みの肴。ホッとしたい時、和やかな気持ちになりたい時にまた寄りたい、初めてなのに心温まる雰囲気のお店でした。

●SHOP INFO

ふくべ

店名:ふくべ

住:東京都中央区八重洲1-4-5
TEL:03-3271-6065
営:16:30~22:40(L.O.22:15)
休:日曜、祝日、第2・4土曜
※価格は2019年9月現在、税抜きの価格です