めくるめくきのこ料理の宴が始まる

食堂車が開くと、予約客が次々と乗り込みます。係員へ予約名を告げ、指定の席に着席して、重箱のフタをいざオープン。

献立は、充実の全20品! この「ちょこちょこ品数多く」が嬉しいんですよね。お目当てのきのこ料理は、以下のとおりでした。
・桜シメジ ほうれん草菊花
・ロージ茸のショウガあえ
・占地(シメジ)マヨネーズあえ ワサビぞえ
・なめこ山くらげ
・イクチ茸の酢の物 大根おろし
・舞茸、エリンギの天ぷら
・松茸入り土瓶蒸し
・茸ごはん(ひたらけ、なめこ、キクラゲ、麻竹)

なめこやマイタケなどの身近なきのこに加え、ロージ茸やイクチ茸など、あまり出回らないであろうレアなきのこに興味津々です。

サクラシメジは淡いピンク色の傘が特徴ですが、調理後だからか、色味ははっきりとは確認できず。噛みしめるとサクッと歯切れよく、シコシコしています。わずかに感じられるホロ苦さも、いいアクセント。

ポピュラーななめこは間違いのない味わいですが、この皿の特筆すべきは、なめこの横に横たわる「山くらげ」のほうでしょう。山くらげは中国原産のステムレタス。レタスといってもよく見る丸い形のものではなくウドのようなビジュアルで、太い茎の部分を食べるのです。日本には乾燥させたものが輸入されており、サラダなどに使われているよう。山くらげのコリコリした食感と、なめこのツルリとした舌触りのハーモニーが楽しい!

「イクチ」は初耳だな……?と思っていたら、キノコマニアの同行者いわく「アミタケの地域名」との話。ほかにもイグチ、アミコ、シバタケなどの呼び名があるよう。イクチ茸はナメコのようなぬめりがあり、歯触りしゃっきり、噛むとうまみがじんわり。
酢が効いているせいかクセはなし。つるんと胃におさまってしまいました。イクチは塩漬けやキノコ鍋で食べるのも定番とのことで、それらもたまらなく美味しそう。またぜひ出会いたい食材です。

お次はロージ茸。見た目はちょっとレバーの醤油煮のような色と形。お品書きには「ロージ茸」とありますが、漢字にすると「老茸」。ネット検索では「苦みの強い大人の味」と説明がありましたが、これもまた少し酸味を効かせた味付けのおかげかクセなく食べやすい。
「香りマツタケ味シメジ」なんていうけれど、今回はロージ茸が一番のヒットかも。肉厚の身をギュワッと噛みしめると、弾力があるけど歯切れよし。うまみがしっかり感じられ、ネット情報の「酒に合う」は完全同意。日本酒が欲しくなるなあ。

知ってるけれどそう何度も口にしたことはないマツタケの土瓶蒸しは主役級の存在感。お猪口に汁を注いでクイっと飲むと……やさしい出汁の香りに癒される! 薄めのだし汁って、永遠に飲めますね。フタをとって、ここぞとばかりに香りを吸い込んでしまいました。
これらに加えて、きのこの炊き込みご飯もあるので、完食すれば正直かなりおなかいっぱい。ところが同行の30代男性2名は、さすがの若さかガタイのよさゆえか。モリモリおかわりしていました(乗車前もかなりのサイズの五平もちとか食べてるんですが)。ごはんはおかわり自由、ガッツリ食べたい人も満足できたようです。

食堂車には観光バスガイドのように司会者も乗り込み、いろいろな質問に答えてくれました。美味しいものはつい黙々と食べがちで、時折シーンとなるのが気まずい時もありますが、この司会者さんの存在で、車内が和やかに盛り上がるのが素敵でした。美味しい食事は、雰囲気づくりも大切です。

きのこ列車は11月までですが、これからの季節は「じねんじょ列車」がはじまります(12~3月)。また、通年実施されているのは「寒天列車」(全て要予約)。のどかな田園風景を楽しみながら、地元食材に舌鼓を打ってリフレッシュ。土地と季節の味わいを、存分に楽しめること請け合いです。

●DATA
明知鉄道(株)
「きのこ列車」は 9~11月(月曜運休)。12~3月までは「じねんじょ列車」 (月曜運休)が運行。
・料金は大人5500円、子供(小学生以下)3300円 明知鉄道の通行手形(1日乗車券)、500円分のお土産つき。
http://www.aketetsu.co.jp/
(取材・文/ムシモアゼルギリコ)