挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。
コーヒープレスのステキなところ。それは、誰が淹れてもだいたい同じ味になる、という点ではないだろうか。
私がフィルターコーヒーからプレス式に目を向けたきっかけは、とあるコーヒーの取材でのこと。腕利きの珈琲焙煎人の自宅に赴き、目の前で一杯淹れていただくという幸せにあずかったのだが、ていねいにフィルターで淹れたコーヒーは夢のような味わい。堪能後にぽつりと「家ではこんな風に淹れられないだろうな」とつぶやいたら、「コーヒープレスを使ってみてはどうですか?雑味もあるけれど、誰が淹れても豆の味がしっかり出る安定感がありますよ」とのお言葉。
なんでも淹れ方のテクニックによる揺らぎが減り、豆の味のよしあしで差が出る、ということ。おそらく「この人はコツコツと淹れ方を練習するより、おいしい豆をあちこち探すほうが性にあうんだろうな」という空気をまき散らしていたのだろう。完全なる正解である。プレスで使う豆は粗めに挽くため100gで大体5~6杯。4種類を100gずつ買って、1ヶ月いろいろ飲み比べるのも楽しそうではないか、と飛びついて今に至っている。
ていねいに暮らす憧れを抱えつつ、時にコーヒー一杯淹れる余裕も枯渇している自分にため息。それでも「楽していいんだよ」とばかり、おいしい一杯を抽出してくれるコーヒープレス。「忙しい」「疲れた」が口癖のときにこそ、ありがたい。余裕があるから淹れるのもいいけれど、簡単に淹れて余裕をつくる、というのも悪くないのだ。
●著者プロフィール
写真・文/木内アキ
北海道出身、東京在住。”オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP : http://take-root.jp/