夏生まれの女性にお似合いの涼やかで優雅なMy first酒器とは。【酒器も肴のうち】

お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りや、あのお店のセレクション。酒器を愛でて一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。

夏生まれの女性にお似合いの涼やかで優雅なMy first酒器とは。【酒器も肴のうち】
食楽web

 きらびやかなプリーツをまとったかのような優美な佇まい。底が厚く、ガラスの重さが心地よい。飲み口に向かって反りがある口造りで、お酒を口に流し込む所作が美しく見える酒器だ。手の大きさに個人差はあるが、男性より女性が持った方がきれいに見えるイメージで作られた酒器なのではないだろうか。なんの根拠もないがそう感じた。なにより、持ち主の手にしっくり馴染んでいたし、それがとても美しく見えたのだ。

『酒器も肴のうち』第31献。ご登場いただいたのは海外マーケットを主軸に日本酒啓蒙活動や関連イベントの企画運営など幅広い事業を展開する「haco style」代表の西尾葉子さん。

「昨年、お世話になっている方からいただいた誕生日プレゼントです。夏生まれなので涼やかなものを選んでくださったみたい。凹凸のあるボディは持ちやすくて手にしっくりきます。実はこれ、My first酒器なんです」(西尾さん・以下同)

 国際利き酒師(SSI)の資格を活かし、仕事柄、日本酒との関わり合いも多い西尾さん。初めてのマイ酒器と聞き、贈り主もそれを知った友人たちも随分驚いたという。えっ、意外。持ってなかったの? と。

「いただいて気づいたんですが、自分のためにこだわって選んだ酒器というものを持っていませんでした。イベントや試飲会などでもらう酒器がたくさんあって、普段はそれを使っていました。

 この酒器はどこか貝殻(二枚貝)を思わせるニュアンスも素敵で、注ぐお酒によってゴールドの表情が違って見えたり、使うたびに新たな発見があるんです。口が広がっているので、香りがたちやすい。冷酒をクイっとやるのにぴったり」

 知らずしらずのうちにお猪口が増え続けてしまう。これは日本酒イベントあるあるだろう。そんなネタでひとしきり盛り上がり、話がお酒情報交換まで及ぶのは酒器トークのお約束だ。贔屓の蔵元はいくつかあるという西尾さん。普段はどのようなチョイスを?

「季節限定のものとパケ買いが多いかな(笑)。あとは、昨年コレ飲み損ねたんだった…とか思い出しながら、飲んだことのないお酒は積極的に挑戦します。外食のときは食事と一緒にお酒を味わいたいので、この料理にはこのお酒が合うよね、いや、こっちの方が合うかもなど、マッチングを楽しみながら飲むのが好きです」

 西尾さんのお酒の楽しみ方に強く共感する筆者。さほど意識しているつもりはないが、ふと口にした食べものとお酒の相性がピタリとハマった日にはニンマリしてしまう。日本酒愛飲家にはいろんなタイプがいるが、波長が合うと話の弾み方が半端ない。

 聞けば、身近な親類が東北の酒蔵と深い縁があり、小さな頃から生活の中に日本酒がある環境だったという西尾さん。20代のほとんどを海外で過ごし、日本酒に興味を持ったのは帰国してから。起業して日本酒に携わることになったのも、自然ななりゆきだったのかも。

 海外に向けて日本酒の魅力を発信する中で「お米を食べる習慣がない国の人に米の旨みとか甘みを説明するのはとても難しい。いかにしてそれをうまく伝えられるか」を熟考する日々だという。日本人同士でさえ、味覚の表現や伝達は難しいと感じるが、最後はいつだって「おいしいね、このお酒」しか言えない筆者などは、どうしようもない。

【酒器FILE】 所有者:西尾葉子(「haco style」代表)*口径64mm *高さ50mm *容量50cc *重量102g
【酒器FILE】
所有者:西尾葉子(「haco style」代表)
*口径64mm *高さ50mm *容量50cc *重量102g

●INFORMATION

haco style

昨春、香港で開催した「和酒フェスHK2017」など、海外市場を中心に日本酒関連のイベント企画や日本酒啓蒙活動を通じての事業を幅広く展開中。日本酒の情報を英語で配信するwebサイト「十八番OHACO」も運営する。

●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。