ふわほわ薄茶orとろ~り濃茶。『一幸庵』の和菓子と一緒に味わいたいのはどっち?

初めての人はその濃厚さにただただ驚く!

「薄茶と濃茶が選べるというと、濃茶は濃くて、薄茶は薄めているの? と思う方も多いですね。もちろん比較すると圧倒的に濃茶は濃いのですが、薄茶が単に薄いお茶というわけではありませんし、そもそも点て方も異なります。

 濃茶は抹茶を練って仕上げたまったりとした濃厚な味わいです。本来、格式の高い厳かな茶席でいただくことが多く、あまり日常的ではないため、飲んだことがないという方がほとんどかもしれません。それならばぜひ濃茶を飲んでみたい! という方もいらっしゃいます。

 よい例えかどうかはわかりませんが薄茶が泡立ちコーヒーで濃茶がエスプレッソといったところでしょうか」(美幸さん・以下同)

 美幸さん自ら考案した濃茶のプレゼンテーションは、洒落たフレンチの一品のように登場します。スタイリッシュモダンな演出に戸惑う人もいるようで「どうやって飲むんですか?」と聞かれることも多いそうです。

 飲むというよりすするというイメージが近い気もしますが、きれいな例えではないけれど、濃茶を口に含めば緑のお歯黒、いや、お歯緑(?)状態。唇は深緑色のリップを塗ったかのようになる(かもしれない)そんな飲み物です。なにしろ、冷めないうちにいただくのが贅沢。

 また、添えられたマシュマロにはちょっとした遊び心がありました。一般的に濃茶は複数人で順番に回し飲みするのが常です。茶碗の飲み口を拭いてから次の人に渡すという作法がありますが、ここで提供するのは一人分。「飲み口を拭くというよりは茶碗に残った抹茶を最後まで味わってもらえれば。例えるならお皿に残ったソースをパンで拭うイメージでしょうか。ぜひ最後の最後まで抹茶本来の味わいを楽しんでみてください」。なるほど!

「もちろん、本来のお茶席で濃茶にマシュマロが添えられることはありません(笑)。ただ、ここは茶席ではなくカフェ。ご自由に召し上がってください」と、美幸さん。続けて「堅苦しい作法抜きで、和菓子や抹茶を味わい、そしてゆったりとした時間を過ごしていただければ」。

イラスト画はお世話になった方から開店祝いにといただいたもの
イラスト画はお世話になった方から開店祝いにといただいたもの

 ふと、壁に飾られたイラスト画の埴輪と目が合いました。「慌ただしい日々の中でせかせかして落ち着かないときもありますが、カウンターの内側からイラスト画を眺めていると、心穏やかに、気負わず、自分のペースでいいんだよと言われているような気がします」。

 それはまるでどこかの茶室の床の間の掛け軸で見た禅語の教えのようにすーっと耳に入ってきたのでした。

●SHOP INFO

cafe竹早72 暖簾

cafe竹早72

住:東京都文京区小石川5-14-2 1階
TEL:080-2247-4567
営:10:00~16:00(L.O.15:30)
休:日・月・祝(土曜は月2回のみ営業)
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●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。太宰治の短篇『不審庵』を読んで茶道に興味を持ち、茶道入門。一方で抹茶はお稽古やお茶会だけのものではないとの思いから、日常生活でお茶を喫する時間を楽しむようになる。お酒の次に抹茶が好き。