かつ丼人生の中でトリハダ級! 元祖・桐生ソースかつ丼『志多美屋』が超絶旨い理由とは?

桐生ソースかつ丼の魅力って何?

 言葉を失うほど美味しい「桐生ソースかつ丼」をいただいた後は、今回の大事なミッションを遂げなくてはと、店主の針谷智之(はりがい・ともゆき)さんにお話を聞いてみることにしました。

 まずは、『志多美屋』さんが元祖と言われる所以について。

「私の4代前の先祖は、群馬の渡良瀬遊水地付近でうなぎの卸しをやっていたんです。あのあたりには小さな川があって、うなぎやドジョウがよく獲れたんです。3代目が桐生に移ってうなぎ屋を始めました。やがて、そこの長男はうなぎ屋を継ぎ、次男坊が、いろんなメニューを出す街食堂を始めたのです。これが私の祖父。もともとうなぎ屋で育っているので、かつ丼一つにしてもタレを工夫して、“うな丼”のごとく、ソースかつ丼を作ったんです」

 つまり、針谷さんの祖父にあたる方が食堂の一メニューとして桐生ソースかつ丼を考案したというわけです。その街食堂が、現在のようなソースかつ丼専門店になったのは、40年前くらいだそうです。
 では、キレの良いさっぱりとした甘辛ソースについて聞いてみると…

「うちのソースは、醤油、みりん、砂糖を配合したいわゆる“うなぎのタレ”に、辛めのウスターソースを入れたものなんです。鼻つまんで食べたらうなぎのタレと一緒ですよ」と笑う針谷さん。でも、お祖父さんの代から、忠実にレシピを守り、その絶妙の配合だからこそ、「とろみが少なく、キレが良い」のが特徴のタレができる、と言います。

これまで1度も切らしたことがない継ぎ足しソースのため、深みがスゴい
これまで1度も切らしたことがない継ぎ足しソースのため、深みがスゴい

 そして、何よりも大事な、こちらのソースかつの要を聞いてみました。

「パン粉ですね。うちのソースかつの生命線です。パン粉は専門業者さんと何度もディスカッションして完成させた非常に乾燥に強いパン粉なんです。だからタレに浸してもベタベタせず、ずっとサクサクしてるんですよ。もし、うちのパン粉が変わったら、常連さんに“味が変わった“って言われちゃうくらい大事なものです」

 というわけで、桐生ソースかつ丼は、代々続くソースの絶妙な配合具合と、何よりも重要なのがパン粉だということがわかりました。

ラードとサラダ油を配合した揚げ油を170度にして、ヒレは4分半かけて揚げるそう
ラードとサラダ油を配合した揚げ油を170度にして、ヒレは4分半かけて揚げるそう

 針谷さんは、とんかつ屋のご主人とは思えないほどスレンダーな方ですが、営業時間中、小さな揚げ油の入った釜の前に立ち続けています。なんと、1年に全国各地から4万人が『志多美屋本店』に訪れるそうで、1人平均5個入りのソースかつ丼を食べるとして、年間20万個、営業1日に平均すると700個近くを揚げていることになるんです。ものすごい体力です。

 さて、“ソースかつ丼行脚”のスタート早々、一生忘れられない味に出会ってしまいました。これからどうなることやら。楽しみです。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

志多美屋本店 店内

店名:志多美屋本店

住:群馬県桐生市浜松町1-1-1
TEL:0277-44-4693
営:11:00~14:00
  17:00~20:00
休:木・第3金
http://www.sitamiya.com