老舗『志多美屋』のソースカツ丼の味とは?
メニューを見ると、「ソースかつ丼」の他に、「玉子かつ丼」(いわゆる卵とじ)やソースかつが別盛りになった「ソースかつ定食」というのもあります。まさかここで「卵とじ」に再会するとは思いませんでしたが、ほとんどの人が「ソースかつ丼」を食べているようです。
さらに観察していると、多くの人が、丼から「ソースかつ」を1切れ箸でつまみあげて、目の上で一旦かざし、うっとりしてからパクッと食べ、その後、おもむろにご飯を口に放り込み、間をおかずにんまりと微笑む…という光景を目にしました。健さん的かっこよさとはほど遠い食べ方ですが、卵とじ派の“かっこみスタイル”とも違い、なんだか美味しそう。とにかく早く食べたくなってきました。
しかし、注文時、思いもよらぬ問題が浮上しました。「ソースかつ丼」と一口に言っても種類があったのです。まず、「ヒレ」と、“脂ノリノリ”というキャッチフレーズの「ロース」の2種類があること。さらにヒレにも1日15食限定の“厚切り”があること。また、4個入り(900円)、6個入り(1,100円)、メガ盛り8個入り(1,200円)という数の選択にも迫られたのです。
店員さんに聞くと「桐生ソースかつ丼」のスタンダードは「ヒレ」とのことなので、迷わずヒレをいただくことに。そして遠方から来たエネルギー消費もあることだし、ということで、お得な「メガ盛り」にしました。ロースより低カロリー・高タンパク質の赤身のヒレは、太りにくいイメージがあるのも嬉しいところ。
待つこと約10分。登場したメガ盛り。なんともフォトジェニックな丼です! 一口大のソースかつが、ごはんを覆い隠すように積みあがっています。この後 崩してしまうのがもったいなくて一度、拝みたくなる気持ちがわかります。
では、さっそくいただきます。
サクッ、フワッ、ジューシー、などという凡庸な言葉では表現できません。パン粉のこんがりきつね色の衣に、さらっとした甘辛いソースの香り、衣と肉とが一体になった柔らかな感触。油っぽさを微塵も感じることのないキレの良い揚げ具合。あまりの美味しさに、「これまでのかつ丼人生を返してくれ!」と思うほど。トリハダが立ちました。
この感動は“ソースかつ1切れ”だけの小さな話ではありません。固めに炊かれたごはんは、そこに染みた“ソースかつのタレ”により、日本一美味しいお米のように感じられるうえ、サラダのキャベツでさえも格別に思えてきます。そう、ソースかつ1切れが、周囲に美味しい影響を及ぼしているわけです。結局、最後は、丼を抱えてごはん1粒も残さずかっこんでしまいました。