中秋の名月。幻の月餅が「ザ・ペニンシュラ東京」で買える!

本場・香港の変わらない伝統と変わりゆく習慣

中秋の名月の夜には、子供たちは提灯を持って公園や広場に集う。この時期の玩具屋の店先には様々な形の提灯が吊り下げられている

 中秋の名月は家族が集まる、大切な年中行事のひとつ。香港では8月、年によっては7月くらいから新商品のポスターやCMを頻繁に目にするようになります。小豆餡や蓮の実餡、ナッツや塩漬け卵の入ったオーソドックスなものから、砂糖控えめのタイプ、抹茶やコーヒー風味の餡、またマンゴーやブルーベリー、チョコレート味のアイス月餅など、バリエーションは様々。有名ホテルやレストランはもちろん、スターバックスやハーゲンダッツでもオリジナルが販売され、いかに広く浸透している習慣かわかりますね。

 一方で、街から消えたのが両手に月餅の紙袋を下げる人々の姿。

 幸運を願いながら家庭の食卓で楽しむほかに、日頃、お世話になっている知人や仕事の取引先に感謝の気持ちを込めて贈るのも大切な習わしです。そのため、以前は重たい紙袋 (一般的な月餅は約直径8cm、厚さ3cm。ひと箱は4個入りが普通で、その重さは優に700g以上。それが複数となると…) を運ぶ人が大勢いましたが、近頃はあまり見かけなくなりました。

 実は、最近ではクーポンが一般的なのだそうです。贈る側は重たい紙袋を持ち歩く必要がなく、贈られる側は好きなタイミングで店舗に交換に行けばいい。そして、もらいすぎて困った時、ほかの誰かにあげるのもカンタンというわけです。

今年の10月4日、お天気はどうでしょうか? 美しいお月様を眺められるよう祈りながら、どうぞ甘い月餅をお試しあれ。

国境を越えた隣の街・深圳では、大きな箱入りの月餅が盛んに売られている。街中のスーパーでも山積みのコーナーが設置されたり、いまでは香港よりも消費が活発な印象

●著者プロフィール

大滝美恵子

食系ライター&エディターとして仕事を始めて約四半世紀。フランス在住時にCAP Cuisine(フランス国家調理師試験)取得。パリ、そして香港を中心に、あちこちを歩き回っています。