戦国武将に憧れた店主が愛用する茶碗の正体とは?【酒器も肴のうち】

「これって、ご飯茶碗じゃないんですか?」

 両手で持っていた茶碗を「いつもはこんな感じです」と言って、片手に持ちかえ、そしてがっちり構える笠牟田さん。その手元はどこか勇ましく、実際見たことはないが戦国武将が勝利の盃か、はたまた自慢の宝かなにかを誇らしげに掲げるポーズにも見える。これはどちらで?

戦国武将に憧れた店主が愛用する茶碗の正体とは?【酒器も肴のうち】

「義父の自作なんです。とくに陶芸を習っているわけではないですが、たまたま教えてもらう機会があって、それでつくったみたいです。最初、本人がご飯茶碗として使っていたようですが、飽きたのか(笑)、自分のところにまわってきて」

 義父さまの使い古し。しかも、ご飯茶碗だったものが酒器に取って代わっている。「何の迷いもなく酒器に?」と聞くと「そうですね。たっぷり入るのでちょうどいいかなと思って。仕事が終わって一杯やるときは、何度も注ぐのは面倒じゃないですか(笑)。日本酒にもよりますが、グビグビ飲めるお酒なら、たっぷりめの器がいい。義父から譲り受けたとき、すぐにぐい呑にしようとひらめきました」

 チビチビやるのも日本酒、グビグビやるのも日本酒。チビチビ派(ときどきグビグビになる時もあるけれど)の筆者にはしっくりこないサイズ感と重さだが、武将の盃のように片手持ちする笠牟田さんにはぴったりで、ご本人にもしっくりくる酒器なのだ。聞けば笠牟田さん、歴史好きで戦国武将好き。お酒をなみなみと注いだ茶碗を持ちながら、きっと誰かになりきっているのではと思われますぞ。

 そんな笠牟田さんだが、歴史好きが高じて骨董市に足繁く通う骨董マニアの一面も。次回は、実際にお店で使われている酒器をご覧いただくとしよう。なんでもお祝いの席で使うめでたき酒器があるという。この続きは【酒器も肴のうち】第6献で。

戦国武将に憧れた店主が愛用する茶碗の正体とは?【酒器も肴のうち】
【酒器FILE 003】
愛用者:笠牟田秀樹(「御料理武蔵野」店主)
*口径120mm *高さ55mm *容量350cc *重量320g
戦国武将に憧れた店主が愛用する茶碗の正体とは?【酒器も肴のうち】

蕎麦の名店や日本料理店での修行経験を生かし、蕎麦はもとより日本料理へのあくなき探求心(ときどきマニアック)を具現化させた懐石料理(昼4,500円、夜9,000円。昼夜共に税・サービス別)が堪能できる。日本酒は店主の出身である愛知県産を中心に、他県の銘酒も揃える。2017年発行の美食ガイド「ゴ・エ・ミヨ」日本版第1号に掲載された実力店。今夏から秋にかけてはオーストラリア産ペリゴール黒トリュフを贅沢に使ったトリュフ蕎麦3,900円、トリュフうな重4,600円も提供する(要予約)。

●SHOP INFO

『御料理武蔵野』

住:東京都渋谷区神宮前4-2-17 青山夏野Rビル2F
TEL:03-3497-1129
営:11:30~14:30(売り切れ終い) 18:00~21:30(最終入店)
  ※9,000円コース予約の場合は時間外の対応可
休:日曜
http://kasamuta.crayonsite.net
Facebook「表参道 武蔵野」

●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。