ウイスキーマニアのウイスキーマニアによるウイスキーマニアのためのバーとは?【ご当地酒場で一献!】

旨し酒と肴を求め、都内はじめ全国を食楽web編集部員が飲み歩く、酒場放浪記!

 前回、日田駅前にある「寳屋本店」で、ご当地グルメを大いに満喫し、すっかりゴキゲンな気分になった私。当然2軒目のお誘いを断るワケもなく、促されるままにタクシーへ乗車し、揺られること数分。車を降り、ふと見上げると、酩酊した頭でもはっきり分かる「WHISKY MUSIUM」なるドでかい看板が目に飛び込んできました。周囲を見回すとどの店もシャッターが閉まっていて真っ暗。そんななかでひと際目立つほのかな灯り。この灯を求めてご当地の洋酒好きが集まってくるのでしょう。

天領日田洋酒博物館/kt,s museum Bar

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 でもなぜミュージアム? そんな素朴なギモンは、店に入るや否やあっという間に解消しました。なんとバースペースの横に、古今東西の珍しいウイスキーをはじめとする洋酒やポスター、ノベルティなどが所狭しと展示されたミュージアムスペースが併設されているではないですか。いや、ミュージアムにバーが併設されていると表現したほうが良いかもしれません。

古今東西のウイスキー、洋酒やポスター、ノベルティなどのミュージアムスペース

 するとそこに「良かったら見ていってください」と登場したのが、同ミュージアムの館長であり、バーのマスターでもある高嶋甲子郎さん。聞けば、ウイスキー好きが高じて、このような日本初のミュージアム&バーを開いたのだそうです。

「世界中を飛び回っていた父が買ってきたさまざまなウイスキーのボトルに興味を覚え、中学生の頃からウイスキーに関するノベルティやグッズを集めるようになりました」

その数、なんと5万点。

中学生の頃からウイスキーに関するノベルティやグッズを集めるようになり、その点数5万点

 圧倒されつつ、館内を見学していると、なんと中央にはウイスキーのポットスチル(単式蒸留器)まで展示されているではないですか。

ウイスキーのポットスチル(単式蒸留器)まで展示されている

「実は、かつて日田にはニッカウヰスキーの蒸溜所があったんですよ。蒸溜所が閉鎖した際に特別に譲り受けることができたんです」

 へぇ? 日田に蒸溜所?? 全然知りませんでしたー。筑後川の上流にある街だけに、やっぱり水がきれいなんですねー。と感慨ひとしきりのまま、バーの椅子に腰掛けます。日田杉を使っているという一枚板のカウンターが見事です。

「何を飲みますか」とマスターモードの高嶋さん。

 まずは日田に敬意を表し、ニッカウヰスキーのシングルモルト「余市」をロックでオーダーします。

ニッカウヰスキーのシングルモルト「余市」をロックでオーダー

 慣れた手つきで氷を削り、ロックを作る高嶋さん。うーん、渋いっす。口に含むとシングルモルト特有の華やかな香りとピート香が広がります。気分はもうマッサンなのであります。

 続いてオーダーしたのが貴重な終売品であるサントリーの「スモーキー&カンパニー スーパースモーキー」。1990年代まで発売されていたもの。レアものです。

スモーキー&カンパニー スーパースモーキー

 その名のごとくスモーキーさが前面に出たウイスキーと思いきや、意外にすっきりと飲めてしまいます。

 バックヤードには、珍しいウイスキーがずらり。見ているだけでも飽きません。そこで発見したのが、懐かしいジョニーウォーカーのラベル。そういえばうちの父親も大切に飲んでたなー。でもよく見るとおなじみの「ジョニ赤」「ジョニ黒」ではありません。

「このグリーンラベルは一度日本での販売が中止となったものですが、最近、販売が再開されました」という高嶋さんの言葉に関心を覚え、思わずオーダー。

このグリーンラベルは一度日本での販売が中止となったもの

 なるほど、ブレンデッドウイスキーながら雑味はあまり感じられず、ピート香とスパイシーさが口中に広がります。結構、好みかも。

 高嶋さんとのやり取りも相まって、お酒が進みます。気付いた頃にはすっかり夜も更けていました。

天領日田洋酒博物館/kt,s museum Bar

 さすがはもと天領の地。周囲を山に囲まれた、九州の内陸部にありながら、独自の文化が育まれてきた日田。さまざまな予想外の発見と出会えた濃ゆ~い一夜となりました。

(取材・文◎編集部)

●SHOP INFO

店名:天領日田洋酒博物館/kt,s museum Bar

住:大分県日田市本庄町3-4
TEL:0973-28-5266
営:20:30~翌0:30
休:水・日