旨い店はタクシー運転手に訊け! 高島平『江戸前味噌ラーメン』の炙りチャーシューはなぜ旨い?

味噌と豚の旨味の融合があっぱれ!

『江戸前味噌ラーメン』の基本メニューは「江戸前味噌ラーメン」と「北海道味噌ラーメン」の2種類です。ドライバー仲間と話をしていると、好みは真っ二つに分かれます。江戸前味噌は白味噌のようにまろやか、北海道味噌の方は赤味噌のように濃厚。それぞれの舌の好みにもよりますが、今回、私がどうしてもオススメしたいのは「江戸前味噌ラーメン」のほうで、そこに味噌漬け炙りチャーシューを加える「江戸前味噌ラーメン 味噌漬け炙りチャーシューメン」(1030円)です。

江戸前味噌ラーメン

 味噌漬け炙りチャーシューは、注文が入ってから炙り始めます。これが、丼に入るのと入らないとでは味が全然違ってくるといっても過言ではありません。

江戸前味噌ラーメン 炙りチャーシュー

 お店の料理人・辺偉 誠さんに声をかけてみると、
「うちの炙りチャーシューは、香味野菜と一緒に寸胴で茹でた後に、味噌を周りに塗って冷蔵庫で2~3日寝かし、注文が入ってからじっくり3~4分かけて炙るんです。こうすることで余分な脂が落ちて、豚と味噌の旨味成分をぎゅっと濃縮できるんです」と教えてくれました。

茹で上がった巨大なチャーシュー
茹で上がった巨大なチャーシュー

 スープの出汁は、鶏ガラ、ゲンコツ、野菜などでベースを作り、江戸前味噌で作ったカエシと合わせて白濁したスープになります。そこにモヤシ、アサリ、フライにしたネギ、大きな海苔2枚をトッピング。最後に分厚い炙り味噌チャーチュー3枚を載せて丼を覆い尽くします。

江戸前味噌ラーメン

 スープはやや甘めの味噌で、まろやかな口当たり。そこにアサリの魚介系と動物系の旨みが層を形成し、複雑な味を作っているんです。炙りチャーシューは余分な脂が落ち、味噌の焼けた部分がとても香ばしい。口に入れるとふんわりと柔らかく、舌の上で溶けていきます。

 さらに、食べ進むとわかるのですが、この炙りチャーシューは、やがてスープの中で崩れて味が溶け込み、刻々とスープの味わいを変えていくのです。味噌と豚の旨みがどんどん濃厚になり、最後の1滴までその味が変化していきます。そして完食後も、味噌の余韻で心身がポカポカしてくるんです。まさに味噌の奥深さを熟知したラーメンだと思います。

江戸前味噌ラーメン

 辺偉さんによれば、『江戸前味噌ラーメン』の母体は『蔵出し味噌 麺場 田所商店』で、全国・海外に味噌ラーメン店を108店舗も出している会社だそうです。しかも、自社工場で味噌を作り、全国各地に伝承されるご当地味噌を各店舗のそれぞれ主力のラーメンにしているそうです。

 ここ高島平店は、12年前にオープンしたときから「江戸前味噌」が売り。一般的な味噌ラーメンよりも甘味やまろやかさがあり、地元の人やドライバーたちの口コミで広がっていったのです。10年以上ラーメン屋を続けるというのはとても大変なこと。客としても、こういうお店をこそ大切にしたいと思わされます。

 ちなみに、「北海道味噌ラーメン」のほうが好きな仲間の一人は、「北海道ラーメン」(720円)に「肉ネギ」(150円)を載せて食べるのがイチオシだそう。私も試してみたら、ネギと唐辛子の辛味がスパイシーで、こちらも美味しかったです。

「北海道ラーメン」に肉ネギ載せ
「北海道ラーメン」に肉ネギ載せ

 江戸前味噌と北海道味噌、どちらが好みか、試してみるのも楽しいと思います。ぜひ、『江戸前味噌ラーメン』でほっこりしてきてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

江戸前味噌ラーメン 外観

店名:江戸前味噌ラーメン

住:東京都板橋区高島平7-14-16 滝ノ上コーポ 1F
TEL:03-5383-6688
営:11:00~23:00
休:無休

●プロフィール

荒川治

東京都内在住のタクシー運転手。B級グルメ好きが高じて、現職に就き、お客さんを乗車させつつ、美味い店探しで車を回している。中年になってメタボ率300%だが、「死神に肩をたたかれても、美味いものを喰らって笑顔で死んでやる」が信条。写真検索で美味しそうなモノを選び、食べに行って気に入ればとことん通い倒す。でもじつは、自分で料理を作ることも好きで、かなりの腕と評判。