圧倒的な世界観! 麻布十番のオーセンティックバー『バー ラ ユロット』が愛され続ける理由

空間だけでなく、細部にもこだわり、美しい所作でカクテルを提供

 カウンターの上部には、岐阜・合掌造りの古民家から移築された太い梁。そのほか、四国の古民家で使われていた古材も、店内には配されています。カウンターの端には「今はもう切り出せなくなった」大谷石の間仕切り。「無垢だからでしょうか、石が呼吸をしていて匂いを吸着しますし、消音や保温の効果もあります」
 大谷石の向こうには、密やかに、テーブル個室も設えられています。

グラスはすべてルネ・ラリックのアンティーク
グラスはすべてルネ・ラリックのアンティーク

「店名の“ユロット”はフランス語でフクロウの意味で、幸運のシンボルともされているのですが、ラリックには、そのフクロウをレリーフにした“ユロット”シリーズがあります。せっかくの店名ですから、それに因んでグラスはラリックで統一しました」

 ドリンクを所望すると、流れるような所作で氷を削り、メジャーカップを華麗に操り、颯爽とシェイカーを振る川瀬さん。その美しい立ち姿勢に、思わず見惚れてしまいます。こうした点も、『バー ラ ユロット』の居心地の良さに繋がっているのでしょう。

「サイドカー」1,800円
「サイドカー」1,800円

「ウチは不思議と、スタンダードカクテルのご注文が多いんです」と微笑む川瀬さん。一杯目は「サイドカー」。ブランデーベースのスタンダードカクテルですが、川瀬さんは2種のキュラソーを合わせることで、オレンジの甘い香りだけでなく、深みも表現しています。泡立ちもきめ細やかで、口当たりは良く、味わいは上品。1930年製の「トウキョウ」というグラスもまた美しさに華を添えます。

「フレンチコネクション」1,800円
「フレンチコネクション」1,800円

 もう一杯は「フレンチコネクション」。やはりブランデーベースですが、今度はアマレットの艶やかな香りが芳しく、何とも、美味しい。グラスは、件のユロットシリーズです。
「ラリックの魅力はやっぱり曲線美でしょうか。ステムの高度な芸術性にも惹かれます」
 コンセプチュアルな店内に相応しい調度品をいくつも揃え、そこを舞台にして流麗な所作でカクテルを作り、付かず離れずの絶妙な距離感でゲストと接する。
 こうした総合力があるからこそ、『バー ラ ユロット』は長く愛されてきたのです。