スケール感と懐の深さを合わせ持つ稀代の名杯|『桜上水 船越』(桜上水)

船越店主は、都内を代表する実力店『渡なべ』の出身。
オープン当初からスーパールーキーとして高い支持を集め、2023年10月には、一都三県の優良店を表彰する『第24回TRYラーメン大賞2023-2024』の新店部門において、総合第1位の栄誉に浴した。文字どおり、2023年を代表する優良新店だ。
現在(2023年12月現在)、『桜上水船越』が提供する麺メニューは、「塩中華そば」と、そのバリエーションのみ(醤油は提供休止中)。

オススメは「ワンタンメン(塩)」。凛とした気品と荒々しい野趣味とを、絶妙なバランス感覚でミクスチャー。「今風の綺麗なラーメンでも、昔風のノスタルジックな中華そばでもなく、適度にジャンクなラーメンを作りたい」。そんな設計思想を、見事に丼へと落とし込むことに成功している。

味わいは、果てしなく重層的。豚(豚ゲンコツ&背ガラ)に由来するダイナミックなうま味と分厚いコクが味蕾にダイレクトアタックを仕掛け、その後を追うように、昆布、煮干出汁に由来する和風味が口いっぱいに拡がる。
気を緩めると、瞬時に最後の一滴まで飲み尽くしてしまいそうになるほど、うま味が、食べ手の琴線に触れる一杯。開業数十年の老舗にも勝るとも劣らない、深みに満ちた貫禄の味わいだ。