実は400軒もの生産者が作っている!? 今さら聞けない「揖保乃糸」の秘密とは?

実は400軒もの生産者が作っている!? 今さら聞けない「揖保乃糸」の秘密とは?
食楽web

●兵庫県たつの市エリアが生んだ、日本屈指の手延べそうめんブランド「揖保乃糸」。知られざる秘密を探りに聖地を訪ねてきた

 今年の夏も口にした人は多いはずの手延べそうめんの名ブランド「揖保乃糸」。兵庫県の播州エリアの豊かな気候風土、良質の小麦、赤穂の塩、綺麗な水によって作られるもので、現在では全国の手延べそうめんシェアの約40%を占めるという日本屈指のブランドです。

 私たちが普段当たり前のように美味しく食べている「揖保乃糸」ですが、実は、「揖保乃糸」には一般に知られていない事実も多くあります。たとえば「いくつもの等級がある」「その等級によって、冬場の3ヶ月のみにしか作られないそうめんがある」「実は1社だけでなく組合に属するおよそ400もの組合員が製造している」など。

 今回は、そんな「揖保乃糸」の秘密を探るべく、兵庫県たつの市にある製造元の兵庫県手延素麺協同組合を訪ね、営業部企画課の天川亮さんに話を聞いてみることにしました。

兵庫県手延素麺協同組合・営業部企画課の天川亮さん
兵庫県手延素麺協同組合・営業部企画課の天川亮さん

良質な原料と播磨人の職人気質により育まれた「揖保乃糸」

「揖保乃糸」の聖地・兵庫県たつの市を流れる揖保川
「揖保乃糸」の聖地・兵庫県たつの市を流れる揖保川

 たつの市は、兵庫県の南西部に位置するエリア。川の流れが緩やかな揖保川があり、この川のすぐ近くに兵庫県手延素麺協同組合があります。取材に応じてくれた天川さんにまず「揖保乃糸」の歴史について聞きました。

「地元では、約600年前からそうめん作りが行われていた文献が残っていますが、本格的にそうめん作りの組織化がなされはじめたのは江戸時代末期の頃のことです。それまでは地元で複数の業者が、それぞれブランドで製造、販売していたため、規格もまちまちでした。粗製や乱造といった悪循環を断ち切るため、基準を設けて品質を統一し、産地としての信頼を守り、伝統を維持していくために1887年には現在の兵庫県手延素麺協同組合の前身である、播磨国揖東西両郡素麺営業組合が設立され、本格的な『揖保乃糸』のブランド形成がはじまりました」(天川さん)

 そもそも600年以上前から、たつの市周辺エリアでそうめん作りが行われていたのには理由がありました。冒頭でも触れた通りの、そうめん作りに必要となる気候風土や良質の原材料が身近にあったことです。

「揖保川の綺麗な水の恵みがあり、粘りや弾力に富む良質の小麦が取れ、さらにそうめん作りに絶対に欠かせない塩も有名な赤穂の塩が近隣にありました。さらに、これは播磨人特有の気質として『職人魂』みたいなところがあるんですね。勤勉で真面目で常に、『より良いものを作りたい』という意識があり組合の設立以降、その品質基準も明確に制度化し、厳格に運用されています。『揖保乃糸』の商標が誕生したのは1894年のことです。厳しい品質基準にクリアしたものだけが組合の統一商標『揖保乃糸』として販売されています。」(天川さん)

 つまり、約600年前からそうめん作りが始まったというたつの市エリアですが、「揖保乃糸」ブランドが確立された時代を振り返っても、130年くらいもの歴史があるということになります。