「朝作って、その日のうちに売る」姿勢に脱帽

『空也』は明治17年、上野・池の端で開業しました。しかし、戦災のために店が焼失。昭和24年に、現在の銀座6丁目並木通りに移転しました。
“もなか”をはじめとする『空也』の和菓子は、夏目漱石など多くの文豪が愛したことで知られ、その味わいは時代によって素材の違いによる差はあれど、変わらない美味しさを届けています。

なかでも「空也もなか」は、予約しないと手に入れることが難しい人気商品。朝から仕込んだ餡で仕上げた「もなか」は、1日8000個ほど作られますが、あっという間に完売してしまうのです。
「朝早くから作って、その日のうちに売る。こんなバカな商売しているところ、他にないでしょう」。たまたま出くわした4代目がそう、話してくれました。しかし、その姿勢こそが、安定した美味しさを守る秘訣なのでしょう。

もなかは、焦がし皮。これに餡がたっぷりと入っています。餡は、北海道・十勝の指定農家で作られる“小豆”と、白ザラメ、水飴を絶妙なバランスで配合し、4時間ほどかけて炊きあげます。どこか懐かしさを感じるほっこりした餡は、すっきりとキレのある甘さで程よい余韻を残します。

餡を包む「もなか」は創業当初、焦し皮ではなかったそう。「ある日、9代目団十郎を訪問した際に、火鉢で一寸焦がして食したものが美味しかったため、それをヒントに今の“焦し皮”になった」といわれています。