いま最も食がアツいエリア「恵比寿」。注目の最旬店はココ!

焼き鳥界のサラブレッドが満を持して独立
『鍈輝(えいき)』

オープン半年足らずながらはやくも予約困難店に
オープン半年足らずながらはやくも予約困難店に

 グルメ激戦区に、また一つ新たに仲間入りしたのが、焼き鳥『鍈輝』。今年2月に開店するや、瞬く間に予約の取れない人気店に踊り出た注目の一軒です。それも、ご主人・小野田幸平さんは、あのミシュランの星を持つ焼き鳥店、目黒『鳥しき』出身と聞けば、納得。3年間の修業のうち、後半は姉妹店の『鳥かど』で店長を任されていたほどの実力の持ち主です。

 しかも、この小野田さん、実は実家も老舗の焼き鳥店。あの長島茂雄監督一家が贔屓にしていた田園調布の名店『鳥鍈』というから驚きです。「もう、小学生の頃から、店の手伝いで鶏の内臓をばらしていましたね。高校の時には丸鶏を捌けるようにまでなってましたから」とのこと。まさに英才教育、焼き鳥界のサラブレッドといったところ。

一串のボリュームもあり、躍動感あるダイナミックな焼き上がりが、なんといってもここの焼き鳥の魅力。
一串のボリュームもあり、躍動感あるダイナミックな焼き上がりが、なんといってもここの焼き鳥の魅力。

 とはいえ、小野田さん曰く「向こう3年は(『鳥しき』の)親方のセオリーを守りつつ、少しずつ自分らしさを出していければと思っています」とのこと。確かに、扱う鶏も修業先と同じ伊達鶏なら、タレも『鳥しき』と『鳥かど』から貰い受けたもの。一串のボリュームも同じなら、お腹がいっぱいになったところで、ストップをかけるお任まかせスタイルも同じです。

焼き鳥はすべておまかせで提供。串は常時20数種類を用意。写真左/脂のコクを楽しめる「ぼんじり」。中央/「丸ハツ」は塩とごま油で。ぷりぷりとした弾力が楽しめます。右/「白玉」。半熟に仕上げたうずらの卵は出汁醤油で
焼き鳥はすべておまかせで提供。串は常時20数種類を用意。写真左/脂のコクを楽しめる「ぼんじり」。中央/「丸ハツ」は塩とごま油で。ぷりぷりとした弾力が楽しめます。右/「白玉」。半熟に仕上げたうずらの卵は出汁醤油で

 ところが、ナンコツのように新たに一工夫した一品も。「骨だけをカリカリと齧っても美味しくないと思い、通常よりやや肉がついている軟骨を探した」のだとか。こんがりと焼きあがったそれは、肉感たっぷり。アツアツを頬張れば、カリッとした歯応えと肉々しさが相まって、ナンコツとは思えないダイナミックな旨みが口中を支配します。

日本酒は常時10種類ほどが揃う。一合1200円~。ワイン、サワー類まで酒類は豊富
日本酒は常時10種類ほどが揃う。一合1200円~。ワイン、サワー類まで酒類は豊富

 しっかりと焼き切ったぼんじりや皮は、出汁醤油を塗って香ばしく、肉が締まりがちな砂肝は、ごま油と塩でコンフィのイメージで火を入れるなど、タレのほかにも、部位に応じて酒や出汁醤油、3種の油などを使い分け、強火で一気に焼きあげます。その思い切りの良さも、美味しさの秘訣なのではないでしょうか。

●SHOP INFO

えいき 店内

店名:鍈輝(えいき)

住:東京都渋谷区恵比寿2-10-5 ROZIS 1F
TEL:03-5422-8611
営:18:00~24:00
休:不定休

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アラカルトが誘う郷愁。80年代の王道的フレンチ
『au deco(おでこ)』

スペシャリテの「タラバガニと蟹味噌スクランブルエッグのパイ包み焼き」5200円(写真はハーフで3500円)
スペシャリテの「タラバガニと蟹味噌スクランブルエッグのパイ包み焼き」5200円(写真はハーフで3500円)

 広尾にほど近い恵比寿二丁目、知る人ぞ知る隠れた名店が点在するこの一角に今年3月、新しくオープンしたのが、ここ『au deco』。フランス古酒とクラシックなフランス料理をコンセプトにしたレストランです。

『Ata』の掛川シェフが今一度、原点に立ち返る
『Ata』の掛川シェフが今一度、原点に立ち返る

 仕掛け人は、代官山の人気店『Ata』のオーナー、掛川哲司シェフ。曰く「不惑の年を迎えた今、僕がこの世界に入った20歳の頃に憧れていた1980年代の伝統的フレンチを、もう一度きちんと見直してみたい。そう思ったんです」との言葉通り、昨今流行りの少量多皿的おまかせコースでなく、昔ながらにアラカルトのみで勝負します。

「花ズッキーニのファルスとリ・ド・ボーのムニエル」2800円(写真はハーフ1900円)
「花ズッキーニのファルスとリ・ド・ボーのムニエル」2800円(写真はハーフ1900円)

 重厚感のあるメニューを開けば、グルヌイユのフリットやピエ・ド・コション、オマール海老のテルミドール風などオーセンティックな料理がズラリ。いずれも二人でシェアしても充分なほど、ボリュームもたっぷりです。

 おすすめは「活タラバガニとスクランブルエッグのパイ包み焼き」。蟹味噌を入れてふんわりと炒めたスクランブルエッグの穏やかな味わいが、バターの香り豊かなサクサクのフィユタージュとタラバガニの旨みを優しく繋いでいます。とはいえ、ただ単に昔の味を再現するだけではありません。そこにさりげなく掛川流のアレンジを加味。オーソドックスでいて、どこか新しい一皿に仕上げています。

古酒の数々。写真右からパイパー・エドシック1960年代2万3000円、ポメリーシャンパーニュ1960年代2万4000円、シャトーシャロン1982年1万6000円など
古酒の数々。写真右からパイパー・エドシック1960年代2万3000円、ポメリーシャンパーニュ1960年代2万4000円、シャトーシャロン1982年1万6000円など

 また、見逃せないのがパートナーである白仁田真澄さん秘蔵のヴィンテージワインの数々。極上のワインを1本、味と香りの変化を楽しみつつゆっくりと味わいたいですね。

●SHOP INFO

au deco(おでこ)店内

店名:au deco(おでこ)

住:東京都渋谷区恵比寿2-23-3
TEL:03-6721-9218
営:18:00~23:00
休:日

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人気韓国宮廷料理店が東京初出店で話題に!
『韓国食堂 入ル 坂上ル』

活きたワタリガニのみを使う「ヤンニャン ケジャン」。参鶏湯と並ぶ人気の一品
活きたワタリガニのみを使う「ヤンニャン ケジャン」。参鶏湯と並ぶ人気の一品

 大阪鶴橋で創業42年の歴史を誇る韓国宮廷料理専門店『韓味一』。ソウルの宮廷料理専門店で、副料理長まで務めた朴三淳(パク・サムスン)さんが始めた同店の味を、よりカジュアルに楽しめる新店『韓国食堂入ル 坂上ル』が、この1月、東京初出店となる恵比寿に誕生しました。

 コースのみ、しかも完全予約制の本店に対し、こちらはコースの他にアラカルトも用意。食堂の名に相応しくコンクリート打ちっ放しの店内は、モダンでラフな雰囲気。とはいえ、味は本店譲り。その本店で約3年間みっちり修業を積んだ小林彩子さんが秘伝の味を伝えています。

「参鶏湯」1人前1600円(注文は2人前より)。滋養豊かで、韓国では夏バテ防止に食べる薬膳料理。好みでカクテキを入れても美味(写真は2人前)
「参鶏湯」1人前1600円(注文は2人前より)。滋養豊かで、韓国では夏バテ防止に食べる薬膳料理。好みでカクテキを入れても美味(写真は2人前)

 定番料理が並ぶ中、まず、食べるべきは朴さん渾身の参鶏湯です。透明なスープに浮かぶクコの実の赤、トッピングされた錦糸卵の黄色に長ネギの緑を盛りつけ、彩り艶やか。宮廷料理を手がけてきた本店の流れを汲めばこその一品といえます。

 一方で、作り方も独特。本来なら、雛鳥のお腹に詰めるはずの高麗人蔘や棗、にんにくなどは加えずに餅米だけを詰め、他の具材は、その餅米を詰めた雛鳥と一緒に水から直接煮込むのが同店のスタイル。

自家製の「高麗人蔘酒」800円。“ボクスン・ドガ”の「ソンマッコリ」グラス1000円もおすすめ。酵母の生きた発泡性のマッコリで、別名シャンパンマッコリ。
自家製の「高麗人蔘酒」800円。“ボクスン・ドガ”の「ソンマッコリ」グラス1000円もおすすめ。酵母の生きた発泡性のマッコリで、別名シャンパンマッコリ。

 アクと脂を取りつつ、弱火で数時間、2度に分けて炊き上げた参鶏湯はほろほろと箸で崩れるほど柔らか。雛鳥を崩し、鍋の中で混ぜ込むほどに餅米とスープが一体化します。鶏の旨味がじんわりと滲みでたスープは、あっさりとした中にも深い滋味があり、餅米のとろみと相まって漢方食材特有の風味を優しく受け止めます。心と身体を癒す佳品をぜひ。

●SHOP INFO

韓国食堂いる さかあがる

店名:韓国食堂 入ル 坂上ル(かんこくしょくどう いる さかあがる)

住:東京都渋谷区恵比寿南1-17-2 Rホール 3F
TEL:03-5734-1699
営:16:00~24:00
休:日

(文◎森脇慶子 撮影◎深澤慎平・加藤史人)

※当記事は『食楽』2019年夏号の記事を再構成したものです