いざアリランラーメンを実食!
ウネウネした茂原街道の山道を登っていくと目的地付近で「アリランらあめん」と書かれた赤い旗がポツン。そこを曲がると、突き当りに古い茶屋のような『らーめん八平』がありました。

着席から着丼まで1時間以上の謎
早起きして東京を出たので、到着した時間は午前10時半。しかし、開店は11時なのに駐車場には車やバイクがすでに停まっており、お店の前には20人ほどが待っています。


店前にあるノートに名前と人数を書き、順番を待ちながらメニューを決めます。種類は4つ。「アリランラーメン」「アリランチャーシューメン」「チャーシューメン」「ラーメン」で、それぞれ大中(ラーメンだけは小も)のサイズから選びます。もちろん筆者は“アリラン”。連れは“アリランチャーシュー”にしました。ちなみに辛増しもできます。
開店と同時に入店できたのですが、なんと着席から約1時間経っても私たちの“アリラン”は着丼しません。新幹線なら東京から静岡まで行けるくらいの時間です。なぜそんなに時間がかかるのかというと……
ずっと厨房を観察していたのでわかったのですが、こちらのお店では、開店してから、まず玉ネギを刻み、それを豚肉、ニンニク、ニラなどとじっくり炒めてから麺を茹ではじめ、その間にチャーシューを切り出し、さきほどの具材をスープで割り、丼に分け、麺を入れて、チャーシューを載せて出す。といった一連の作業をします。

そして1回に作る量は、約14~15杯。それを出し終わると、再び玉ネギを刻み始め……と1から丁寧に繰り返すのです。1巡目で約40分の待ち時間。20番目の我々の“アリラン”は2巡目に回されたので、1時間以上の待ち時間となったわけです。
しかし、この自然豊かな場所で、「遅い!」などとは1ミリも思いません。「ゆっくりで大丈夫」「美味しい空気でも吸ってのんびりしているから」「なんなら手伝いましょうか」という広い心持ちになるんですよね、不思議と。
しかし、その空気なのですが、玉ネギとニンニクを炒めている香りが充満して、とくに厨房に近い席に座っていた我らは目がかなりシバシバしてきました。そうして約1時間20分あたりでようやく着丼。


濃い茶色のスープは醤油味。玉ネギがどっさりと入っており、すりおろしたニンニクやニラの強烈な香りがします。スープには豚肉の甘みが溶け込んでいて、ラー油のピリ辛具合もいい塩梅。お店の方に聞けば、中に入っているラー油も麺も自家製だそう。

とくに秀逸だったのがバラチャーシューです。脂がくるりと渦になっていて、柔らかくて口どけが良く、くどさはありません。とくに中太のコシのある麺をよくスープに絡めてチャーシューと一緒に口に放り込むと、まろやかなコクが広がります。
これはラー油いっぱいの勝浦タンタンメンや、チャーシューの煮汁をスープに使う竹岡式ともまったく違います。待った分、ゆっくり優雅に食べようと思いましたが、美味しくてものの10分くらいで食べ終わってしまいました。「おかわり!」といって、もう1杯くらい食べたくなるくらい。しかも、食べ終わった直後から、ニンニクのせいか、わかりやすくパワーが出てきた感じがします。
隣に座っていた、2巡目グループの若いイケメンライダーたちも「1時間半待ったけど食べて良かった~」と満面の笑顔。さわやかです。東京の喧騒で食べるラーメンではなく、こうした大自然の中で唯一無二のラーメンを食べるという心豊かな経験でした。みなさんも、ぜひ、のんびり峠のアリランラーメンを食べに行ってみてください。
(撮影・文◎土原亜子)