骨から旨みがジュワ〜っと染み込み、どこの部分もジューシー!

これが三笠会館の「骨付き鶏の唐揚げ」です! 運ばれたときから香ばしい匂いが漂って食欲をそそります。創業時の調理法の記録は残っていませんが、少なくとも今の総料理長が入社した昭和50年(1975年)当時から変わっていないそうです。タレにあまりつけ込まず、また肉を丸めることなく、ヒラヒラと秘伝のタレにサッと通してすぐに片栗粉をつけて揚げるのだそうです。
丸めずに揚げているせいか、衣は一般的な唐揚げよりもさらにパリッパリ&サックサク! それでいて中はパサつきが一切ありません。驚くほどフワっとして柔らか。

特にムネ肉はパサつきが苦手な人もいると思いますが、この唐揚げは厚みのあるところも含めてすべてジューシー。なのに油っほさはなし。タレにつけこまないので、水分や旨みが流れることなく、お肉のなかにギュッと閉じ込められているんです。しかも、骨の中にある旨み成分の髄液が肉に浸透していて、おいしさが倍加。鶏肉はやっぱり骨付きがウマい! と改めて思わされます。

丸鶏をさばいて調理しているので、一皿にモモ肉、ムネ肉、手羽元、ドラムスティックなど、さまざまな部位が盛られており、それぞれ違った味わいを楽しめるようになっています。この贅沢感、思わず「やっぱり銀座は違うな〜」と唸ってしまいます。
そのままでもちょうどいい味付けですが、添えられている練りがらしや、胡麻塩、レモンで変化をつけられるので、お好みで調整してビール以外にハイボールやスパークリングワインにも合わせるのも最高。練りがらしと胡麻塩は創業者の考案でメニュー誕生当初から添えられていましたが、レモンは昭和50年代から添えるようになったそうです。
スパイシー&フルーティなカレーも外せない逸品

三笠会館といえば、もう一つ名物メニューがあります。それが「インド風チキンカレーランチ 骨付きチキン・砂肝入り」(2100円・ランチのみ提供)。こちらにも骨付きチキンがゴロゴロと入っています。

お味はというと……“老舗の味”のイメージをいい意味で裏切られました! スパイスが幾重にも複雑に絡み合った味わいは本場のインドカレーのようであり、そこに通奏低音のように日本の老舗レストランのホッとさせるやさしい味もあり、チラホラと潜んでいるマンゴーチャツネのフルーティさが華やかさを添えていて……ものすごくオシャレな味なんです。骨つきチキンのほかにコリコリした歯ごたえの砂肝が、またいいアクセントになってる!

レシピは、三笠会館伝の創業者・谷善之丞が支援したインド独立運動の志士から伝えられたものを受け継いできたそうで、メニューとして提供し始めた1950年代からスパイスの比率を守っているとのこと。こんなモダンな味を当時から提供していたことに驚かされます。
ティラミスブームも先取り! 業界に新風を巻き起こし続ける
2025年に100周年を迎える三笠会館。長きにわたり愛され続けてきた理由について、三笠会館の広報担当・堀田瑞江さんは次のように語ります。
「ご家族でのご利用いただく機会も多い店なので、お父様がお子様を連れてきて、そのお子様が大きくなられてまたお子様を連れて……と、長くご愛顧いただいています。ありきたりではありますが、当店のモットーは、変わらないために、変わり続けていくこと。新しいことをいち早く取り入れる社風なんです」

堀田さんによると、飲食業界のなかでもかなり早期から海外研修を取り入れ、1986年、銀座四丁目西銀座デパート2階にイタリアン『ブォーノ ブォーノ』がオープンした際には、イタリア研修を行い、メニューにティラミスをとり入れたそうです。1990年のティラミスブームを4年も早く先取りしていたんですね。
まとめ

100年にわたって飲食業を牽引し、さまざまな逸話を持つ三笠会館。伝統あるメニューも古びることなく、新しいファンを増やし続けているのは、こうした社風あってのことなのだと納得させられました。
(取材・文◎松みのり)