苦味が後をひく大人の黒カレー

登場した「特選牛タンカレー」に、「お~!」と思わず声が漏れる。真っ黒なカレーソースに浮かぶ真白いご飯。その上に、目測だが、厚さ3cm、縦12cm、横8cmはあろうかという巨大な牛タン。洋食屋のシチューなら4,000円くらいするヤツだ。
「牛1頭の牛タンを丸ごと、2日くらいかけて野菜と煮込んでいるんですよ」と増田さん。
口を縦横、目一杯広げ、牛タンにかぶりついてみると、ふわりとしていて、歯と舌で簡単に噛み切れる柔らかさ。牛タンにはスパイスの味はなく、“テールスープ”のような優しい味がしみている。これはむしろお安いのでは? と思ってしまうほど。

黒いカレーソースのほうは、さらさらした液状で、味はかなり個性的だ。焙煎したような不思議な香りがして、口に入れると最初に苦味がくる。そのあと、スパイスの様々な香りと味が現れて、辛くもあり、甘くもあり、酸味もほんのりあるが、全体としては深いコクを感じる。

「カレーソースのベースのスープは、牛タンや牛スジ、野菜で炊いたスープをブイヨンとして使っています。小麦粉は使わず、30種類ほどのスパイスを入れてさらっと食べられるように作っているんです。1番の特徴は、スパイスのいくつかを店で焙煎していることですね。だから、最初に苦味と燻した香がくるでしょう?」
その苦味が後を引いてたまらない。“大人の黒カレー”という言葉が似合いそうだ。