四谷三丁目に登場した「濃厚煮干ラーメン」がスゴい!|田中一明のラーメン官僚主義!

四谷三丁目に登場した「濃厚煮干ラーメン」がスゴい!|田中一明のラーメン官僚主義!
食楽web

垣間見える『灯花』の覚悟!始まりの場所をリニューアルして臨む、再チャレンジ

「ここは、『灯花』にとって特別な場所。そんな特別な場所で再チャレンジするにあたり、どのような味のラーメンを出せば良いのか。店主の川瀬と一緒に知恵を絞り尽くしましたよ」と高橋店長。

 ラーメンに用いる素材の候補として、カニ、煮干し、牛のいずれかを考えていたというが、熟慮の結果、煮干しを選択。昨年11月に開業した『京紫灯花繚乱』のご当地路線(※1)を踏襲し、新潟のご当地ラーメンである「燕三条背脂煮干醤油」を世に送り出すことに決めた。「奇をてらわず、長く愛され続ける味を提供したいと思ったんです」。決めた後で後悔したくない。そう考えると、答えは煮干しの一択だった。

 そんな『吟醸煮干灯花紅猿』のロケーションは、冒頭の高橋氏の言葉どおり。メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅から徒歩4分。外苑東通りに店舗を構えていた1号店『塩つけ麺灯花』(※2)の跡地。つまり、『灯花』にとっての原点だ。

 現在のところ、麺メニューは「煮干らぁ麺」とそのバリエーションのみ。これまで多種多様なラーメンを創り出してきた『灯花』グループであれば、メニューを複数化することなど造作もなかったはず。それをせず、あえてメニューを絞り込んだところから、同メニューに懸ける同店の覚悟が垣間見える。

 登場した「煮干らぁ麺」は、一見すればオーソドックスな燕三条背脂煮干の顔立ち。だが、五感を研ぎ澄ませば、立ち上る香りからスープに浮かぶ背脂の質感に至るまでの全ての要素に、『灯花』の技術の粋が尽くされていることが分かる。

 スープを口に含むとまず、再仕込み醤油など3種類の醤油を用いたタレのコク深い味わいが、食べ手の頬を緩ませる。主役である煮干しがタレと渾然一体となり、いたずらに個を主張しない味の構成も、実力店ならではの余裕を感じさせるものだ。

 背脂は、時間が経っても型崩れしない最高級のものを熱々の状態で使用。スープに蓋をする液状油との相乗効果によって、食べ始めから食べ終わりまでスープの温度が低下することはない。

 うま味が放散せず口の中で潔く収束し、食べ手に心地良い余韻を抱かせる味作りが『灯花』の真骨頂。この「煮干らぁ麺」にも、そんな「灯花イズム」がしっかりと受け継がれていた。

(撮影◎田中章雅)

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(※1)『京紫灯花繚乱』は、当コラムの【第5回】でご紹介させていただいた『灯花』グループの3号店。

(※2)『塩つけ麺灯花』は、2012年6月にオープンした『灯花』グループの第1号店。同店は、本年6月1日をもって『吟醸煮干灯花紅猿』へとリニューアルされたが、『塩つけ麺灯花』の味そのものは、いずれ、どこかの新店舗で再開させたいと考えているとのこと。

●SHOP INFO

四谷三丁目に登場した「濃厚煮干ラーメン」がスゴい!|田中一明のラーメン官僚主義!

店名:吟醸煮干 灯花紅猿

住:東京都新宿区荒木町8-3 プチ藤ビル
TEL:03-5379-0241
営:11:00~22:00
休:なし
岩海苔煮干らぁ麺980円、半熟煮干らぁ麺880円など、煮干しらぁ麺のバリエーションメニューが豊富に揃う

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。