田中一明のラーメン官僚主義!【第10回】狐狸丸【蒲田】

田中一明のラーメン官僚主義!【第10回】狐狸丸【蒲田】
食楽web

鯛出汁ラーメンブームの火付け役となるか!?『狐狸丸』が放つ渾身の1杯

 現在、都内では、鯛から採った出汁を用いたラーメン、いわゆる「鯛出汁ラーメン」の人気がうなぎのぼりだ。

 もちろん、今はなき調布の名店『らーめん千ひろ』の「鯛骨スープ麺」など、ひと昔以上前から、鯛を素材としたラーメンを提供する店はあった。が、店自体が名声を獲得しても、「鯛出汁ラーメン」がジャンルとして注目を浴びることはなかった。1990~2000年代当時、「鯛」という素材は新し過ぎたのだ。

 ところが、幾星霜の秋が過ぎ、情勢は変わった。2015年4月、『鯛塩そば灯花(四谷三丁目)』が、2016年1月、『真鯛らーめん麺魚(錦糸町)』がオープン。両店ともに「鯛」を積極的に前面へと押し出し、各年を代表する人気店のひとつにまで上り詰めた。『灯花』のみならず『麺魚』までもが支持を集めたことによって、今、鯛出汁そのものがブームとなりつつある。

 そのような状況の中、本年2月15日に登場したのが『狐狸丸』だ。同店のロケーションは、昭和レトロな街並みがノスタルジーを呼び起こす商店街の一角。JR蒲田駅から徒歩5分程度とアクセスは至便だが、近隣に勤める方や地元に住居がある方でなければ、なかなか足を運ぶ機会が訪れないような場所だ(※1)。

 同店で提供される中華そばのスープは、愛媛県・宇和海で獲れた新鮮な真鯛を用いた魚介出汁と、鳥取県・大山鶏をたっぷりと使用した鶏出汁を、それぞれ別の寸胴で作り、提供直前にブレンドしたもの(※2)。スープのみならずカエシにも真鯛のアラを用いる。その徹底的な鯛へのこだわりから垣間見えるのは、一切の妥協も許さない味に対する真摯な姿勢だ。

 その結果、鯛の華やかな風味を、大山鶏の滋味が受け止め支えるダイナミックな味わいを実現。スープにひと目で存在が分かるほど大量の鯛の身を投入し、「身」ならではの豊潤なうま味とコクを演出するギミックは他店に類例を見ず、その発想力に感服するほかない。

『鯛塩そば灯花』、『真鯛らーめん麺魚』に続く「第三」の鯛出汁の旗手は『狐狸丸』になりそう。食べ進めるにつれ、そんな予感が確信へと変わっていった。

 なお、同店では「鯛茶漬けセット」の注文が必須。残ったスープをご飯に注ぎ(※3)鯛茶漬けを作れば、至福のひと時が訪れる。

(撮影◎松山勇樹)

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(※1)ちなみに、同店の『狐狸丸』という屋号は、同店のロケーションが、まるで狐(きつね)や狸(たぬき)が出てきそうな雰囲気だと感じたことにより名付けられたもの。

(※2)同店のスープも「Wスープ」の製法を採用している。

(※3)残ったスープにご飯を投入し、おじや・リゾット・お茶漬けのようにして、スープ・米の双方をいただく、いわゆる「飯割り」のバリエーションである。スープが洋風であれば「リゾット」、濃厚であれば「おじや」、淡麗であれば「お茶漬け」のようになる。(大きな声では言えないが、)本体であるラーメンよりも、締めの飯割りの方が好きという重度のファンも一定数、確認されている。

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●SHOP INFO

狐狸丸

店名:狐狸丸

住:東京都大田区西蒲田5-12-8 村川ビル 102
TEL:03-3733-1039
営:11:00~15:00 17:00~22:00
不定休
鯛茶漬けセット(鯛そば+ミニ茶漬け)は1160円。鯛塩そば、鯛醤油そば単品なら共に820円。

●著者プロフィール

田中一明

フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は8,000杯を超える。