Q4.具体的に必須脂肪酸が多い油はどれ?

「アマニ油」や「えごま油」です。「アマニ油」にはオメガ3系脂肪酸であるα‐リノレン酸が56%、「えごま油」には61%も含まれており、ここが大きな特徴です。またオメガ6系脂肪酸であるリノール酸も適度に含まれているので、2つの必須脂肪酸を効率よく摂取できます。
ただ、オメガ3系脂肪酸のα‐リノレン酸は酸化されやすく、加熱調理には不向きですので、そのまま生でお料理にかけて食べるのがオススメです。サラダや豆腐、納豆にかけたり、味噌汁にたらしても良いでしょう。精製された「アマニ油」や「えごま油」は基本的にはクセがない油です。料理の味を損ねないので、どんな料理にでも合いますよ。
Q5.そのほか、健康に役立つ注目の油はありますか?

最近注目されているのは、ビタミンEを豊富に含む「こめ油」です。ビタミンEは、血液の流れをよくしたり、活性酸素の働きを抑え、老化現象を引き起こす物質「過酸化脂質」の生成を抑える働きがあります。そもそも日本人は、ビタミンEの約2割を植物油から摂っていると言われていますが、そのビタミンEを特に豊富に含むのが米油なのです。
また米油を加熱すると米油特有の成分が分解されて、バニリンという物質ができます。これはバニラエッセンスの甘い香りの元。つまり米油を加熱して使うと、ほのかに甘い香りがして料理が美味しく感じられます。
なお、米油は生でも加熱でも使える油ですが、特に揚げ物の調理に使うと、カラッと揚がり、油っぽさが少ないという特徴があります。
Q6.アスリートやモデルなどが積極的に摂る油は?

2015年に「ココナッツオイル」が脚光を浴びました。この油には体作りをサポートする中鎖脂肪酸が多く含まれています。中鎖脂肪酸の特徴は、一般的な植物油の主成分である長鎖脂肪酸とバターなどに含まれる短鎖脂肪酸の中間の長さであること。この「中鎖脂肪酸」は、摂取した後、速やかに分解されエネルギーになるため、一般的な油に含まれている脂肪酸に比べ、体脂肪として蓄積しにくいことが知られています。つまり体脂肪になりにくいのです。
さらに中鎖脂肪酸は、自らが分解されやすいだけでなく、継続して摂取することで、自分の体の体脂肪も分解しやすくする可能性も示唆されています。最近、アスリートやモデルなどが使用して話題になっている「MCTオイル」は、この中鎖脂肪酸だけの油であり、ココナッツやパームフルーツなどのヤシ科の植物が原料となっています。
ちなみにココナッツオイルは、香りや味にややクセがあるオイルですが、加熱や生でも使用できます。一方、MCTオイルは、さらりとしたクセのないオイルですが、加熱には不向き。えごま油やアマニ油同様、そのまま料理などにかけて使っていただくオイルです。
Q7.健康成分が多い油でもやはり摂りすぎは太る?

はい。油の種類を問わず、適量摂取を意識してください。適量摂取にあたって助言をひとつ。油には、目に「見えない油」と「見える油」があります。肉や魚、乳製品、パンやお菓子など、普段の料理に使う食材に含まれている油は「見えない油」、植物油やマーガリン、マヨネーズ、ドレッシングなど、油であることが(油を含むことが)分かりやすいもののことを「見える油」と言います。
私たちはこの両方から油を摂っていますが、全体的に見ると約8割を「見えない油」から摂取していて、気づかないうちに脂質を摂りすぎていることが多いのです。そこで、油の摂り過ぎを意識している方は、まずは「見えない油」を減らすよう心掛けていただきたいです。例えば、脂身の多い肉や、お菓子の食べ過ぎを控える、など。ただし、肉や魚はタンパク質を豊富に含む重要な栄養源ですので、一切食べない、といった極端なことをせずに、脂の少ない赤身のお肉に変えるなど、賢く食材を選んで油の適量摂取を心掛けてください。

油が太る、体に悪いというのは大きな誤解であることがわかりました。油は量と質の両面から考えて賢く摂ることが健康や美容、老化防止の近道。ぜひ、食生活の油を見直してみてくださいね。
(取材・文◎土原亜子)