先日、荻窪駅で友人と待ち合わせをしていると、ルミネの入り口に、「Siberian Basque シベリアンバスキー」と書かれたでっかいポスターが置いてありました。ポスターに載っているのは、チーズケーキらしき写真と、「シベリアチーズケーキ」、「銀座立田野」という文字だけ。シンプルなだけに気になりました。
『銀座立田野』といえば、あんみつ、みつ豆などを代表とする甘味処の名店です。その老舗が、シベリアンハスキーならぬ「シベリアンバスキー」というダジャレのようなネーミングのケーキを出している……。ちょっとニヤけてしまいましたが、待て待て、そもそも「シベリアチーズケーキ」って何だ? スマホで調べてみても、そんなものはシベリア地方にはありません。
でも、「シベリア」というケーキはよく知っています。カステラの生地に羊羹を挟んだ三角形のケーキで、昔、パン屋や和菓子屋でよく見かけました。しかも「シベリア」はルーツ不明のお菓子ということでも有名です。ロシアのシベリア地方にはそんなケーキはなく、あんこが入っているので日本発祥らしいと推測されてはいますが、いつ、どこで生まれたのかも、誰が作ったのかも、さらに名前の由来も全くわからない、謎のお菓子です。
また、「バスキー=Basque」といえば、最近、一大ブームを巻き起こしたスイーツ「バスクチーズケーキ」を思い出します。あれの本家は、スペインのバスク地方・サンセバスチャンにある老舗のバル『ラ・ビーニャ』に代々伝わる秘伝レシピのチーズケーキです。
なので、バスクチーズケーキも、“バスク地方で食べられているチーズケーキ”ではなく、バスク地方にある1軒のバルで誕生しただけのものなのです。追記しておくと、その門外不出のレシピを世界で初めて、東京・白金高輪にあるバスクチーズケーキ専門店の『ガスタ』のパティシエだけが継承し、日本初上陸させたことがきっかけで「バスクチーズケーキ」ブームが起きたわけです。
すなわち、「シベリアンバスキー」は、シベリア地方ともバスク地方ともなんら関係がないはず。また、見た目も「シベリア」とも違うし、「バスクチーズケーキ」とも全然違う。だいたい、チーズケーキとあんこを合わせるなんて謎すぎます。
これはダジャレで笑って済ますことができなくなりました。大袈裟は重々承知で、一体、何を企んでいるのだろうと考えずにはいられなくなり、ルミネに入店して買ってみることにしました。