お昼が待ち遠しくなる! 山本美文さんの「オーバル弁当箱」

お昼が待ち遠しくなる! 山本美文さんの「オーバル弁当箱」の魅力
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ランチタイムというのは日中仕事をしている人間にとって数少ない息抜きの時間。私の場合、12時が近づくとと機械的にお腹のサイレンがなりソワソワが始まる。

ただ残念なのは仕事場がランチの不毛地帯というべき場所にあること。行きたい店が非常に限られている。周りのスタッフもなかば諦めモードでかなりの割合をコンビニ弁当で済ませていることが多い。ただできればそれだけは避けたい。

困るのは行きつけの店が定休日のとき。そんなときにたいして行きたくない店に行って、たいして食べたいとは思わないものを、たいして安くない値段で食べることくらい、やるせないことはない。そこで最近は週に一度だけでも、お弁当を家で作って持って行こうと決意。ならば弁当箱を探さねばということで、まずはモチベーションを上げるためにも道具探しから始めることにした。

最近はちょっとしたお弁当ブームなので、店には多種多様な弁当箱が売っている。とはいえプラスチックやタッパーのような樹脂系のものには昔から抵抗があって、せめてシンプルなアルミとか、木製のお弁当箱、例えば曲げわっぱの弁当箱なんてないかなと色々探してみたのだが、これがなかなか気に入ったものが見つからない。だいたい近頃のお弁当箱はどうにも小さく感じられる。私のような白米大好き人間にとっては、小ぶりな弁当箱にご飯とおかずの両方を入れるなんてとても考えられないのである。そうかと言って二つも持ちたくないし。

半ば弁当探しにも飽きていた頃だったろうか。たまたま岡山に住んでいる木工作家さんの仕事場を訪ねた際、シェーカーボックス(19世紀のシェーカー教徒によって作られたオーバル型の木製収納ケース)の形をした朱色の木工品が目に入った。これは何かと訊ねると「それはお弁当箱なんです。元々は娘が既製品の弁当箱だと小さくて足りないと言うので作ったものです。初めは拭き漆の茶色いお弁当箱だったんですが女子高生には地味過ぎるということで朱色にしました」。なんとまさに私が求めていた雰囲気とサイズ。しかも赤好きの私にとって朱色は願ってもない色である。ということでめでたく私も弁当生活を送ることができるようになった。それにしても家で作ったお弁当ってなんて美味しいのだろう。

漆のオーバル弁当箱のふたを開けた画像
木工作家・山本美文さんによる朱漆の「シェーカー様式 漆のオーバル弁当箱」。蓋を深くしたり、布着せ(素地に布を張る漆器の技法)を施すことで蓋の外れや汁漏れを防ぐ工夫をしている。

●著者プロフィール

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大熊健郎

CLASKA Gallery & Shop DOディレクター。1969年東京生まれ。インテリア会社、編集プロダクション勤務を経て2008年CLASKAのリニューアルを手掛ける。同時に立ち上げたライフスタイルショップ「CLASKA Gallery & Shop DO」ディレクターとして、バイイングから企画運営全般を担う。
http://do.claska.com/