昼酒ときどきお買い物。
緑の庭で至福の週末を。

お腹が満たされたところで、クラフト探しに出発。器やガラスなどの美しい作品を眺めるのはもちろんですが、毎年密かに楽しみにしているのが、各ブースに掲げられた作家さんの自己紹介文。「ワタシとチバと『にわのわ』」という共通タイトルで綴られた人柄が感じられる内容に、思わず見入ってしまいます。
なかでも、作家・木村衣有子さんの著書『はじまりのコップ-左藤吹きガラス工房奮闘記』(亜紀書房)で知った白子町在住のガラス作家・左藤玲朗さんは、町の具体的な移住情報を載せた異色の紹介文で、読み応えあり。経歴や作品の紹介ではなく、あえて誰もが気になる実用情報を表に出す生真面目さがチャーミングです。その姿勢は、実直さと美しさを兼ね備えた自身のガラス作品と重なって見えます(作品写真は前編参照)。
ところで、クラフトフェアの醍醐味といえば、思いがけない出会い。お目当てを無事に買えた喜びもあれば、意図せず出会ってしまうときめきもあるでしょう。この日の私はまさに後者。器を買うつもりが、千葉育ちの血が騒ぐのか、単に食い意地が張っているか、まさかのピーナッツのブローチに一目惚れ。こうした思わぬ買い物も、昼酒の効能です(笑)。
すっかり満足したところで、本日の食べおさめ。千葉市「豆NAKANO」の自家焙煎コーヒーと、九十九里町「HAPPY NUTS DAY」のローストピーナッツ(煎り落花生)を持ち寄り、木陰のおやつタイムです。友人たちと戦利品のお披露目をしつつくつろいでいると、あっという間にイベント終了時刻に。当日は、家族連れ、女性グループ、ひとり客、母娘客、散歩ついでの地元住民など、クラフト好きに限らず、さまざまな世代がそれぞれの目的で森の時間を楽しむ姿が印象的でした。また、会場周辺でも寄席やお囃子、古本市などのイベントが行われ、街全体でこのイベントを歓迎している温かさも感じられました。
「人出はあるのに、広い森が会場だから、混雑した印象がなくて落ち着いて過ごせるのがいい」「クラフトに興味がない人でも受け入れてくれる、おおらかな雰囲気に親しみを感じた。食べ物も美味しいし、リラックスできるイベントだと思う」。
同行した都内在住の友人たちもすっかり楽しんでくれたようで、千葉っ子として心から満足。またひとつ、千葉の良さを教えてもらった休日になりました。
さて、来年はどんな出会いがあるでしょう。緑の森にすっぽりと抱かれた「にわのわ」が、今から待ち遠しいです。




●EVENT INFO
「にわのわ アート&クラフトフェア・チバ」は2018年も開催予定。詳細はHP(http://niwanowa.info/)にて。
主催・運営:にわのわ アート&クラフトフェア・チバ実行委員会
後援:佐倉市 佐倉商工会議所
協力:国立歴史民俗博物館 DIC川村記念美術館
●著者プロフィール
白井いち恵
千葉市育ち&在住の編集者・ライター。『千葉の本』『千葉の本2』(京阪神エルマガジン社)を手がけ、出身地・千葉県の知られざるおいしい&楽しいを大特集した。路線バス好きでもあり、著書に『東京バス散歩』(同上)。房総のおすすめ路線は、レトロな車両が現役で走る天羽日東バス。