睦沢町へ移転オープン!古民家カフェ「furacoco」の帰還。【房総food記】

千葉在住ライターが、東京の友人に自慢したい、“ピーナッツだけじゃない”県内のおいしいものを気ままに紹介。房総を拠点にした「食」にまつわるあらゆるものを見つめた、飲んで・食べて・知る千葉の風土&food記です。

生活と商いの両立を目指して出した“睦沢町への移転”という答え。

(千葉県長生郡睦沢町)

取材時(8月上旬)の「本日のランチ・ドリンク付」1,350円は、タイ風グリーンカレー、自家製ピクルスなどのサラダ、じゃが芋のディル豆腐マヨあえの3品。目も舌も喜ぶ鮮やかさ。
取材時(8月上旬)の「本日のランチ・ドリンク付」1,350円は、タイ風グリーンカレー、自家製ピクルスなどのサラダ、じゃが芋のディル豆腐マヨあえの3品。目も舌も喜ぶ鮮やかさ。 | 食楽web

 以前は、同じ千葉県内の野田市に店を構え、多くのカフェ愛好家から支持を集めていた「furacoco」。築50年の古民家でいただくワンプレートランチが評判で、2015年に閉店した際は惜しむ声がたくさん聞かれました。それから2年──あの人気店が再始動するという情報を聞きつけ、早速お邪魔してきました。
 新たな店の場所は、県中央部にほど近い睦沢町(むつざわまち)。今年から、休耕地を利用してオリーブ栽培が始まった話題の町でもあります。

 店主の細山(さやま)克也さん・かおりさん夫妻は、ともに栃木・益子で働いていた時に出会い結婚。いつかは細山さんの生まれ故郷である千葉に戻り、自分たちの店を持ちたいと考えていたそうです。
 最初に野田で店を始めたのは、たまたま気に入った物件が見つかったから。しかし、初めての店舗経営で直面する現実と、理想とする店の形にとらわれすぎ、いつしか自分で決めたルールに苦しむようになったといいます。

「視野が狭くなっていたんだと思います。例えば、“うちの料理は必ずワンプレートにしなくちゃいけない”と思い込んで、料理に対するモチベーションが下がってしまったりとか。今考えると、独りよがりでした」と細山さん。「それに、店のことが中心になりすぎて、自分たちの生活をおろそかにしていました。このままではいけないと思い、一度リセットしようと考えたんです」

 原点に戻って考えたのが、“自然豊かな場所でくつろげる店をやりたい”という気持ち。南房総やいすみなどの物件も見て回りましたが、偶然通りかかった睦沢ののどかな景色に心惹かれ、最終的に今の場所に決めました。

「睦沢は、自然に囲まれているけれど、山が深過ぎないし、車があれば外房線の茂原駅や上総一ノ宮駅へアクセスできるし、住みやすいところなんですよ」とかおりさん。

 睦沢に移り住む直前には、かおりさんのお腹に新たな命が宿っていることも判明。その時のことを、二人は感慨深く振り返ります。

「今度のお店は、子供にとっては故郷になる場所。わが子のためにも、この土地できちんと生活をし、睦沢の町に溶け込んだ“地域の店”にしていきたいと思いました」

 そう思えるようになったのも、試行錯誤した野田時代の経験があればこそ。再スタートを切った二人の店は、迷いが吹っ切れたことを感じさせる、風通しのいい空間でした。

朗らかであたたかい人柄の細山夫妻。細山さんが料理を、かおりさんが接客を担当し、一歳半になる息子さんを育てながら奮闘中。
朗らかであたたかい人柄の細山夫妻。細山さんが料理を、かおりさんが接客を担当し、一歳半になる息子さんを育てながら奮闘中。
ご近所の養蜂家が採取した睦沢産の蜂蜜「ムツザワハニー」(1瓶900円)は、「furacoco」でのみ販売。こちらを使った素朴な甘さが癖になる手作りマフィン(写真左・1個280円)は、ぜひ手土産に。
ご近所の養蜂家が採取した睦沢産の蜂蜜「ムツザワハニー」(1瓶900円)は、「furacoco」でのみ販売。こちらを使った素朴な甘さが癖になる手作りマフィン(写真左・1個280円)は、ぜひ手土産に。
農道と田園風景を見渡せる窓際のカウンター席。暑い時期は網戸になり、涼風と鳥や虫の声に癒される。
農道と田園風景を見渡せる窓際のカウンター席。暑い時期は網戸になり、涼風と鳥や虫の声に癒される。