陸奥湾の花火とともに、料理はクライマックスへ

コースはいよいよ後半戦を迎えます。アイスプラントや枝豆、多肉植物で食感を重ねた、この時期しか取れない木もずくのひと皿に続き、スルメイカの塩辛とジャガイモのニョッキを合わせた一品へ。そうして期待を高め、供されたのはいしなぎという魚。ゼラチン質の多い身質ながら、皮目を焼き切ってジューシーに。ヒメタケとともにラビコットソースを合わせました。

そして、大間のマグロ、真打ち登場です。表面を焼くことでハリが出た身に歯を立てると、身がはじけ、やがて脂が溶け出していきます。ポルチーニ茸の戻し汁のソースが濃厚なマグロの旨みに寄り添い、黒ニンニクと玉ねぎをキャラメリゼしたペーストを合わせれば、旨みと風味が相乗されていくようです。

そして、クライマックスはアワビ。肝と焦がしバターの濃厚なソースに、下はシッタカという貝の出汁で仕立てたリゾットに。得も言われぬ旨みが重なり合い、口中に押し寄せてきます。

陸奥湾の恵みをこれでもかと味わい尽くすコース料理。それでいて不思議と“肉がない”という物足りなさはゼロ。むしろ、満足感とともに残るのは、心地よい食後感と多幸感でした。

途中、闇に包まれた陸奥湾に花火が打ち上げられるというサプライズに、ゲストから感嘆の声が上がりました。
スペシャルなシェフと食材、ロケーション、文化があり、はじめて結実する『DINING OUT』。日本を旅する野外レストラン、次回は日本のどこに現れ、数日限りの儚くも美しい夢を見せてくれるのでしょうか。
●DATA
DINING OUT