僅か数日のうちに消えてなくなる、幻の野外レストラン『DINING OUT』を体験!

僅か数日のうちに消えてなくなる、幻の野外レストラン『DINING OUT』を体験!
陸奥湾を一望する浅虫温泉の護国寺が会場となった | 食楽web

 日本のどこかに突然現れ、わずか数日で儚い夢のように消えてしまう野外レストランをご存知でしょうか。世界のトップシェフが腕をふるい、地元の生産者とレストランスタッフが限られた時間の中、密な関係を築き、手を取り合って供される料理。まさにその数日にしか味わい、楽しむことができない野外レストラン。それが『DINING OUT』です。

『DINING OUT AOMORI-ASAMUSHI with LEXUS』で腕をふるった『abysse』の目黒浩太郎シェフ
『DINING OUT AOMORI-ASAMUSHI with LEXUS』で腕をふるった『abysse』の目黒浩太郎シェフ

 これまで佐渡、宮崎、沖縄、尾道など、日本のさまざまな土地で開催されてきた『DINING OUT』。今回その舞台となったのは、青森県の浅虫温泉です。東北初開催となる『DINING OUT AOMORI-ASAMUSHI with LEXUS』は、温泉街の高台に佇む護国寺の境内がレストラン会場に選ばれました。そこは、浅虫温泉のシンボル、湯の島が浮かぶ、陸奥湾に対峙する絶好のロケーション。そんな場所で味わえる料理も、またこの浅虫温泉という場所にふさわしいものでした。

 今回の『DINING OUT』で料理を担当したのは、代官山にあるフレンチレストラン『abysse』の目黒浩太郎シェフ。『abysse』といえば、魚介類に特化したフレンチとして知られ、オープン間もなくして一つ星を獲得したレストランでもあります。この日の特別なコースは、その目黒シェフが陸奥湾で取れた魚介類に焦点を当てて考案したものでした。

陸奥湾の食材の豊かさを表現した、
圧倒的なアミューズ

レセプション会場で供されたアペリティフ。磯辺の石を散らし、磯香をも会場に持ち込んだ
レセプション会場で供されたアペリティフ。磯辺の石を散らし、磯香をも会場に持ち込んだ

「これまでにいろんな産地の魚介類を使ってきましたが、なぜか陸奥湾には縁がなかったんです」(目黒シェフ・以下同)

 事前に食材の視察に訪れた目黒シェフは、陸奥湾の豊かな海の恵みに驚いたと同時に、そのことに悩ませたそうです。「陸奥湾はその魚介類の質の高さはもちろん、魚種がとにかく豊富。いろんな魚を使いたかったのですが、普通のコースではすべてを使うことはできませんでした」。そんな思いがあったからなのでしょうか。この日用意されたメニューは、ちょっと変わったものでした。

 料理の幕開けは、レセプション会場となった青森県立美術館で供された2種のアペリティフ。米麹のチップスにのせたバフンウニと、ビーツと合わせたマグロの赤身で、十分にゲストの期待を高めてから、会場を護国寺に移します。そして、コースが始まり、ゲストは驚愕することになるのです…!

リンゴ酢とハチミツを合わせた優しい味わいのソースが、ホヤの磯香に優しく寄り添う
リンゴ酢とハチミツを合わせた優しい味わいのソースが、ホヤの磯香に優しく寄り添う

 コースのスタートはなんと8種にも及ぶアミューズでした。リンゴ酢と合わせたフレッシュなホヤ、ホタテはチップスにされ、旨みと香りを凝縮し、フジツボはベシャメルソース仕立てのエッグタルトに。カワハギは昆布締めにしてラベンダーのアイスパウダーと合わせ、アイナメはりんごの枝に刺したソーセージ風、ワタリガニは濃厚なビスク仕立てに……。

肝を和えたカワハギは、ラベンダーのアイスパウダーをかけて、クリーミーながらも爽やかに
肝を和えたカワハギは、ラベンダーのアイスパウダーをかけて、クリーミーながらも爽やかに

 合わせるお酒は、陸奥八仙のスパークリングに、弘前のクラフトビールなど、青森の“地酒”。それらが小気味良いテンポで供されて、ゲストは“目黒ワールド”に引きずり込まれていくと同時に、陸奥湾の豊かさを無意識のうちに身体に刻み込まれる、というわけです。

ぷりっと焼かれた表面を破ると、脂ののったアイナメのジューシーな味わいが広がった
ぷりっと焼かれた表面を破ると、脂ののったアイナメのジューシーな味わいが広がった

 目黒シェフの狙い通り、アミューズを増やすことで、魚種が豊富な陸奥湾の恵みを最大限に表現しつつも、『DINING OUT』だからこそできるプレゼンテーションでゲストをもてなしてみせたのです。

「普段『abysse』で、8種ものアミューズを供するとなるとテンポよく出せず、ゲストを飽きさせてしまいます。ですが、『DINING OUT』は40名のゲストを、50名ほどのスタッフでもてなす。だからこそできた8種のアミューズでもあるんです」

 そうしてアミューズで十分に期待を高めてから、コースは残り5皿でいよいよ中盤、そしてクライマックスを迎えます。