世の飲食店でシュウマイに出会うのは意外に困難であり、それが私の焼活(シュウカツ=シュウマイ活性化に向けた活動)の原点でありますが、いわゆる「中食」と呼ばれる調理済み惣菜や冷凍食品においては、シュウマイの存在は割とメジャーです。
スーパーやコンビニエンスストアに行くと、シュウマイがないことはほとんどありません。ただ、各社シュウマイに力を入れているかというと、餃子や小籠包、春巻きなどの売り場の演出に比べれば、やはり見劣りする印象は否めません。中食、冷凍食品は家庭でのシュウマイ市場を広げる重要な役割を担うと私は考えています。
その中食のなかで、一社だけシュウマイに対して別格の注力ぶりを発揮しているスーパーがあります。そのスーパーこそ、成城石井。数あるスーパーチェーンの中でも高品質志向の分類であり、海外食材なども豊富に扱うことでも知られていますが、自家製シュウマイに注力する姿勢が、顕著に見られます。
まず、店内での存在感の大きさ。前出のとおり、売り場では餃子や春巻き、小籠包などを中心に配置し、シュウマイは1商品ほどがひっそりと置いてあることがほとんどです。しかし、成城石井は惣菜コーナーの中でも、かなり注目度の高い場所に陳列しています。それこそ、ライバルである餃子や小籠包、春巻きを見逃してしまうほどに。
そして、種類の多様さ。成城石井の自家製シュウマイは、スタンダードである豚肉を使った「国産豚のジューシー焼売(小)」をはじめ、もうひとつのシュウマイの王道ともいえる「エビシュウマイ」にとどまらず、「長ネギとタマネギの黒コショウシュウマイ」「鳥の甘辛味噌シュウマイ」、さらには「トマトバジルシュウマイ」(!)と、シュウマイ界全体を見回しても個性的と言える創作シュウマイが、毎日店頭に並んでいます(2018年11月、新宿店での確認)。これだけ種類があると、店内での存在感も更に増します。
まさに多様性溢れるシュウマイを展開できるのも、基本のシュウマイがしっかりとしているからこそできるのだと、味わってみると改めてわかります。
同社が自家製シュウマイを手がけたのは、同社内にも明確な資料がないほど古く、同社広報曰く、30年以上前から取り扱っているとのことです。そして10年前、今に続く基本のシュウマイのスタイルが確立したそうです。
その基本といえる「国産豚のジューシー焼売(小)」は、豚肉中心に玉ねぎの入った、極めてオーソドックスな具材。肉感はみっちりしており、かみごたえも十分、豚肉をはじめとするさまざまな旨味がじわりと入り混じり、それでいてしつこくない絶妙なバランス。まさに万人がおいしいと感じる、満足感溢れる王道的なシュウマイを完成させているといえます。
具材を詳しく見ると、フレッシュな生の国産豚を使用。化学調味料を使わず、干し貝柱や干し椎茸に加え、干しエビも入っています。玉ねぎに関しては、淡路島産を使用。結果、原価率は高くなるものの、10年を経てなお販売し続け、今では年間60万パック(1パックに12個入り)、同社オリジナル商品の中で常にベスト五の売り上げを達成しています。同社のシュウマイの愛は、着実にお客に伝わっている証です。
まさにシュウマイの「土台」といえる基本がしっかりしていれば、それをベースにのせる具材を変えてバリエーションを増やす……と考えがちですが、「国産豚のジューシーシュウマイ」以外を味わうと、それぞれ使用する肉、野菜、調味料もかなり異なります。ひとつひとつのシュウマイごとに中身から研究し、個性的なシュウマイの味わいを作り上げている姿勢が伝わってきます。
そのシンボルといえるのが、「国産鶏とねぎの甘辛味噌焼売」と「トマトとモッツァレラチーズの鶏焼売」です。まさにオンリーワンといえる圧倒的な個性を誇るこの2種ですが、特筆すべきは、個性に負けない味わいの完成度の高さ。「国産鶏とねぎの甘辛味噌焼売」は、シュウマイのひき肉と甘辛味噌の絶妙なコントラストを口の中で感じさせ、ピリリと効いた辛さが、従来のシュウマイにないインパクトを残します。
「トマトとモッツァレラチーズの鶏焼売」は、ちょっとシュウマイとしては合わないのでは……と訝りながら口に運ぶと、見事にトマトとバジル、チーズ、そしてシュウマイの土台が見事にマッチ。シュウマイそのものが個性を主張すぎない分、個性あるトマト、バジル、チーズの味わいを引き立て、それでいてシュウマイらしい食べ応えと余韻をしっかりと残ります。開発の方の努力に敬意を表するしかありません。
他の「葱づくし深川葱と淡路島玉葱の黒胡椒焼売」も、ネギと胡椒が和の風味をしっかりと打ち出しながら、シュウマイとしての満足感も残します。「国産鳥とねぎの甘辛味噌焼売」は、あっさりとした印象の強いシュウマイとは一線を画す、味噌のどっしりとした塩気が感じられる一品。和シュウマイの新たな可能性を感じさせます。
基本も押さえつつ、これだけバラエティーに富んでいれば、老若男女何かしらのシュウマイが気に入り、手に取ってしまうことは十分に考えられます。白いご飯のお供もいいですが、「坦々」「トマトバジル」あたりをはじめ、お酒のお供としてもシュウマイは力を発揮しそうです。
「国産豚」は、王道シュウマイらしくビールでいきたいところです。特に貝柱や干しエビの旨味もあるので、ビールの中でも香りのあるクラフドビールなどにも合いそう。「エビ」はわさび醤油とともに焼酎水割りなんかもいいのでは。「トマトバジル」もその名の通り、イタリアンな赤ワインなどいいのではないでしょうか。
家庭の日常食に、家飲みの差し入れに、幅広く重宝しそうな成城石井のシュウマイたち。是非成城石井を訪れる際は、シュウマイを選択肢に入れておいてください。
●DATA
成城石井
店舗数:東北、関東、関西に165店舗(2018年12月時点)
TEL:0120-141-565(お客様相談室)
営:各店舗に準ずる
休:各店舗に準ずる
http://www.seijoishii.co.jp/
※12月30日〜1月2日の間「国産鶏の甘辛味噌焼売」、「葱づくし深谷葱と淡路島玉葱の黒胡椒焼売」は販売を休止
●著者プロフィール
シュウマイ潤
本名種藤潤。教育大学卒業後、フリーランスのライター、エディター、ウェブプランナーとして活動を開始し、現在はオーガニックと食を中心とした幅広いジャンルで取材執筆を行う。焼売に関しては2015年頃から着目し、インスタグラム「焼売生活」で全国各地の焼売を実食し発信。2018年4月現在で200種類を制覇した。2018年5月にTBS「マツコの知らない世界」でシュウマイの知らない世界を紹介している。