もう辛くない!大根おろしをより美味しくする「鬼おろし」。【ザ・キッチン道具マスター02】

大根おろしをより美味しくする「鬼おろし」
食楽web

かしこい道具さえあれば、腕はなくともおのずと料理のレベルはアップする。道具で楽しむ・道具でラクする料理エディター、Amiyumiの “道楽料理”。

大根おろしが辛い理由は、おろし方に原因があったのだ

 昔から、大根をおろす作業が苦手だった。たくさんおろすと腕が疲れるし、勢いあまるとうっかり指を削ってしまう。そもそも、おろすという単調な作業がかったるい。かったるい作業ほどさっさと終わらせたいので一気にやっつける、というのが私のスタイルであった。

 そんな大根おろしだが、最近ある本を読んで驚いたことがある。大根おろしの辛み物質は、「アリルイソチオシアネート」というそうだ。この成分、もともとの大根には存在しない。切られたり削られたりして組織が破壊され、細胞内の一部の酵素や成分が混ざることではじめて発生するのである。つまり大根の辛さは、大根内に起こった化学反応の産物だったのだ。

 そういえば、大根おろしを辛くしないコツは、円を描くように、大根の繊維に添ってゆっくりおろすことだとよく言われる。これは、組織をできるだけ破壊しないための工夫に違いない。思い起こせば、これまで私の作る大根おろしは辛かった。いつも力づくでおろしていたため、そのとき大根の中ではすさまじい勢いで化学反応が繰り返されていたに違いない。

 さてここらへんで、今回のテーマである「鬼おろし」へと話を進めよう。三角形の歯が並んだ無骨なまでの形状。これで大根をおろすと、ザクザクと粗めの大根おろしができる。粗めだから大根の組織は“適度に破壊”される。つまり、辛み成分の発生も“適度”に抑えられるというわけ。鬼おろし大根のほどよい辛みは、大根本来の甘みをぐんとひきたててくれる。シャキシャキとした食感も楽しめるので、焼き魚はもちろんサラダや和え物、いろいろな料理のトッピングにと幅広く使えるのである。

 嬉しいことに粗くおろされるぶん、普通の大根おろし器より、手早く作業が終わる。少々気の短い私だが、大根一本ぐらいわけないのである。というわけで、レシピは、鬼大根おろし大根をたっぷり使った「軟骨入り鶏だんごのみぞれ鍋」を紹介する。

大根おろしをより美味しくする「鬼おろし」

 そろばんに似た形状だが、もちろん計算はできません。三角形の歯が鬼の歯のようだから鬼おろし。竹で作られた素朴な姿にも愛着が増す。大根だけでなく、にんじん、れんこんなどの根菜にも応用可能だ。