川崎初のどぶろく醸造所で造られる「クラフト」な酒!その魅力、誕生秘話とは? 『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』【酒屋と飲食店のおいしい関係8】

川崎初のどぶろく醸造所で造られる「クラフト」な酒!その魅力、誕生秘話とは? 『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』【酒屋と飲食店のおいしい関係8】
食楽web

●こだわりの酒屋とそこからお酒を仕入れる飲食店、2つの視点から紐解くお酒、料理の魅力に迫ります。

 川崎においしいお酒を扱う酒屋があります。蔵元の情熱とこだわりを深く理解し、酒一滴一滴に込められた物語を感じ取る。味と風味を熟知し、来店する地元の人や飲食店の好みに合わせたお酒を提供する酒屋、『地酒や たけくま酒店』。川崎で日本酒を扱う飲食店界隈では有名な、こだわりの酒屋です。

“こだわりの酒屋はおいしいお酒を知っている、おいしい飲食店はこだわりの酒屋からお酒を仕入れているはず”という仮説から『地酒や たけくま酒店』の2号店となる元住吉店店長・佐藤温志さんに相談して実現した、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を発掘する本企画。

 第8回は『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』からお届けします。

 紹介するお酒は「KAWASAKI どぶろくメゾフォルテ」。なんと、飲食店である『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』店舗内に設置された畳6畳に満たない小さな醸造所『DOBUROKU★STUDIO 川崎醸造所』で造られる「どぶろく」なのです。

「どぶろく」は肌の保湿やコラーゲン生成を促進する効果が期待できる「α-EG」、肥満などの生活習慣病の抑制、免疫力の向上が期待できる「レジスタントプロテイン」などが含まれ腸活・美肌・脂質対策が期待できる、特に女性に注目されているお酒です。

おいしいだけじゃない、コミュニケーションツールとしてのお酒

左・『地酒や たけくま酒店』元住吉店店長・佐藤さん 右・『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』オーナー・松枝幸司さん
左・『地酒や たけくま酒店』元住吉店店長・佐藤さん 右・『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』オーナー・松枝幸司さん

 20年前、取引先として川崎の酒屋を探していた時に『地酒や たけくま酒店』本店と出会ったと松枝さんは言います。

 ところが当時の松枝さんは実はお酒について無知に近かったそうです。特に日本酒は飲まず嫌い。世の中は焼酎ブームで、そもそも『たけくま酒店』には焼酎を探しに訪ねたくらいで、日本酒を積極的に仕入れようとは思わなかったそうです。しかし松枝さんは料理とお酒を提供しながら、刺身と合わせるのに焼酎でいいのだろうかと、どこか心にしこりがあったようです。

 そんな松枝さんの“日本酒人生”を決定づけたのは、ある日ふらりとお店に現れた一人の“日本酒好き”のお客様でした。

松枝さん:オーダーをいただき日本酒の大吟醸をお出しすると、すぐにひとこと「ダメだ」と。意味が分かりませんでした。「なんでですか、大吟醸ですよ!?」と食い下がっても、「日本酒は管理で味が変わる。大吟醸でも扱いが杜撰なら台無しだ」と言われてしまい。さらには「今度美味い酒を飲ませてやる」と言って帰られました。

 松枝さんは、こんな厳しい指摘を受けたことが衝撃だったと振り返ります。

和食と日本酒のペアリングにこだわる松枝さん
和食と日本酒のペアリングにこだわる松枝さん

松枝さん:二か月ほど経ちそのお客様はもう来ないだろうと思っていた頃、また突然お店に来てくれて、「この酒を飲んでみろ」と言った通り日本酒を持ってこられました。言われるがまま一口飲むと、「えっ…」って。華やかな香りで甘みもきれいで、当時はこんな日本酒があるんだとあまりの美味しさに驚きました。そこからかなり日本酒を勉強して素晴らしさにのめり込んでいったんです。和食と合わせるなら日本酒がいいんだと気づく頃には、心のしこりもなくなっていました。
 そのお客様との出会いがなければ、日本酒をここまで愛することはなかったかもしれません。飲ませてくれた日本酒は、山形の出羽桜酒造が醸す「出羽桜 桜花 吟醸酒」でした(1980年代、世の中に香り良い吟醸酒が普及する火付け役となった日本酒)。
 それからは『たけくま酒店』に日本酒の相談をするようにもなり、日本酒と和食中心のお店に方向転換しました。当時、川崎で日本酒と和食を出すお店は少なかったんです。売り方も半合売りを始めました。すると、だんだんとその魅力がお客様に伝わっていくのを感じられて至福の時でした。

「至福」と言えば、松枝さんは前回の記事の『シフク』さんと親交があり、出会ったのも日本酒にのめり込んでいった縁だと言います。

松枝さん:たけくまさんのお酒の説明は端的でとっても助かります。飲んで分かることって味の感想だけになってしまうので、蔵とつながる特約店だからこそ知り得る“生きた情報”はありがたい。ネットに載らない貴重な話や細かな情報を教えてくれて、こちらとしても正しく伝えたい。するとお客様は日本酒にぐっと興味をもってくれる。一緒に料理のペアリングを考えたり、次はどんな味を試してみようかと盛り上がったり、それって良い広がりですよね。お客様には有名な銘柄を提供するメリットもありますが、無名でもストーリーを面白がってもらえれば充分なんです。酒屋さんとつながることの大事さはそこにあると思います。
 もともと接客も苦手で…、でもお酒を介するとなんか会話が弾んじゃうことってないですか? 良いコミュニケーションツールだなぁと笑

佐藤さん:松枝さんのおっしゃることは、飲食店と酒屋の理想的な関係性ですね。そんなお付き合いができると、こちらも姿勢を崩せないので励みになります。お酒が好きな人は美味しい料理も好きだと思うので、「日本酒も飲めて料理も美味しいお店ある?」なんて聞かれたら喜んで紹介しちゃいます。そういうダイレクトな関係が日本酒の循環の一助にもきっとなりますよね。
 でも、接客については同じタイプでしたか! 僕も店に立っていながら、お酒がなかったらあまり人と話せることがないかも…。 “生きた情報”に生かされています笑

「海老のしんじょう揚」740円。海老の食感を残しつつ、驚くほどふわっふわに仕上げられたお店の名物メニュー。日本酒とのペアリングも抜群。食べ止まらず一人で8個平らげる女性もいるそうです
「海老のしんじょう揚」740円。海老の食感を残しつつ、驚くほどふわっふわに仕上げられたお店の名物メニュー。日本酒とのペアリングも抜群。食べ止まらず一人で8個平らげる女性もいるそうです