ビブグルマンの和食店『料理 シフク JIYUGAOKA』でおいしい料理とお酒の楽しみ方【酒屋と飲食店のおいしい関係7】

ビブグルマンを獲得した名店で味わう鰹と「墨廼江 特別純米酒」 東京・自由が丘『料理 シフク JIYUGAOKA』【酒屋と飲食店のおいしい関係】vol.7
食楽web

●こだわりの酒屋とそこからお酒を仕入れる飲食店、2つの視点から紐解くお酒、料理の魅力に迫ります。

 川崎においしいお酒を扱う酒屋があります。蔵元の情熱とこだわりを深く理解し、酒一滴一滴に込められた物語を感じ取る。味と風味を熟知し、来店する地元の人や飲食店の好みに合わせたお酒を提供する酒屋、『地酒や たけくま酒店』。川崎で日本酒を扱う飲食店界隈では有名な、こだわりの酒屋です。

“こだわりの酒屋はおいしいお酒を知っている、おいしい飲食店はこだわりの酒屋からお酒を仕入れているはず”という仮説から『地酒や たけくま酒店』の2号店となる元住吉店店長・佐藤温志さんに相談して実現した、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を発掘する本企画。

 第7回は佐藤さんと、東急東横線・元住吉で愛され、「ミシュランガイド横浜・川崎・湘南2015特別版」ではビブグルマンを獲得した名店、2024年、自由が丘に移転した『料理 シフク JIYUGAOKA』からお届けします。

 紹介するお酒は日本酒「墨廼江 特別純米酒」(墨廼江酒造)。宮城県石巻市に蔵元があります。

「気軽に和食を楽しんでほしい」 店名に込めた想い

『料理 シフク JIYUGAOKA』店主・深瀬あつしさんと女将・深瀬昌恵さん
『料理 シフク JIYUGAOKA』店主・深瀬あつしさんと女将・深瀬昌恵さん

『シフク』は“私服”と“至福”という二つの意味を含ませた店名です。ドレスコードもなく、気軽な服装でふらりと訪れてほしい。その一方で、日常の少し先にある“ご褒美”として、特別感のある料理や時間を提供したい。

 そんな思いがお二人の佇まいにもぎゅっと詰まっています。

 実は『シフク』は、以前は元住吉で12年間営業していました。地元の方からこよなく愛され、ミシュランのビブグルマンにも掲載されるほどの実力店。2024年には常連客に惜しまれつつも建物の取り壊しで立ち退きを余儀なくされ、新天地として自由が丘の場所で営業を再開しました。

佐藤さん:『シフク』さんのご常連さんは当店にも来てくれていて、閉まると聞いた時にはやはり惜しむ声が多かったです。来店されるたびに「今度はどこで営業するんだろう…」と気にされている方もいて。愛されてるなぁと。

深瀬さん:悪口じゃなかったらいいよね。だとしても言わないか(笑)

佐藤さん:やめてください(笑) そんなことないです。

昌恵さん:でも先日、元住吉時代のお客様がいらした時に「最近佐藤さんがネットでこんなことやってるよ」と、この企画のことを教えてもらってたんです。そしたらその翌日に佐藤さんがいらっしゃって! 運命めいたものを感じました(笑)

佐藤さん:その日はオファーをしに行ったわけではなく、仕事終わりに美味しい和食と酒を飲みたくて…。そしたらそんな話を聞いたので、出てみませんかとお願いしました。

独立前から通い続けた「たけくま酒店」本店 心強いパートナーとの縁

当時の伝票について語る、深瀬夫妻と『たけくま酒店』元住吉店店長・佐藤さん
当時の伝票について語る、深瀬夫妻と『たけくま酒店』元住吉店店長・佐藤さん

 深瀬さんと『たけくま酒店』の社長が出会ったのは、深瀬さんの独立前に遡ります。

深瀬さん:前職の飲食店でたけくまさんから仕入れていたこともあり、好きな銘柄も多かったので独立してからもお世話になりたいと思っていました。

 いよいよ独立して、期待と共にオーダーした日本酒の数々。メニューに詳しいコメントを添えたいものの、厨房仕事の合間では手が回らない……。

 そんな時、『たけくま酒店』社長が自ら納品伝票にこまやかなお酒の情報を書き添えてくれたのだとか。

佐藤さん:『シフク』さんはもともと本店でお世話になっていて、移転されてからは僕が配達に行ったりと引き継ぐかたちでお付き合いを続けていただいていますが、この話は初めて聞きました。創業当時の伝票を保管していただいているんですね。

深瀬さん:あの頃は本当に助かりました。思い出なので捨てられなくて。

 深瀬さんは当時の伝票と思い出を今も大切に保管しています