
急行が止まらない駅にはなぜか面白い人達がいる。
最近、東京ではおしゃれな角打ち(酒屋の一角で買ったお酒をその場で飲むこと)が増えてきました。一方で、昭和初期のスタイルを貫く昔ながらの角打ちは、時代の流れとともに数を減らしています。
そんな「硬派」な角打ちには、他では決して出会えない、ユニークな人生経験を持つお客様によく出会います。少し勇気を出して隣に立って話してみれば、極上のお酒のつまみになる面白い話が次から次へと飛び出してくるのです。これこそが、角打ちの醍醐味かもしれません。

まず向かったのは、横浜は京急子安駅。駅から徒歩3分のところにある酒屋『美加登屋』の角打ち。時速100kmオーバーの特急が一瞬で通り過ぎていく街。美加登屋さんの店内にある冷蔵庫から好きな飲物とおつまみを選びます。

隣にいたお客様にこのお店について聞いてみます。もう何十年もここに通っているといいますが呑んでいるのは缶コーヒー。
「あれ?お酒じゃないんですか?」ときくと、「いやいや、体大切にしないとダメでしょ」と。
角打ちで缶コーヒーという新しい常識を教えてもらいます。

「ここはね、昔は漁師町だったけど、東京湾アクアラインの整備で漁ができなくなってね、国から5千万円ほどもらって廃業にした人が多かったのよ。でも、大金の使い方なんて知らない人に金を渡しちゃったらさ、昼間から酒をあおっちゃってさ、あっという間に無一文。たくさんあったスナックもなくなって、人もいなくなり、街はすっかり寂しくなっちゃった。野良猫ですらどこかに行っちゃったのよ。ガハハハ!」
ここは大都会「横浜駅」から3.1kmの場所。
お酒を題材にしたアート
カウンターには常連の画家さんが作ってくれたという、オリジナルで作品が並んでいます(すべて非売品)。これが見ればみるほどよくできています。




お店の歴史を店主のお母様に聞く

3代目の店主のお母様にお話が聞けました。(もうすぐ100歳だよと言っておられましたがまだ80代らしいです。こーゆうテキトーなところも味わいです)
関東大震災の後に店を構え、息子で3代目。ここの商店街は戦後の復興時に初めて昭和天皇が訪れた街だったと話します。
長いお店と人生の歴史の中で多くの酔っ払いをみてきたというお母さん。
「浜の酔っぱらいは朝から飲むから、お店は朝9:00からやっていてね。シャコと穴子を大量に漁師が持ってきて、これで酒を飲ませろと言うのよ。魚だけはいつもうち大量にあったわ」と笑います。
漁師同士の喧嘩もすごく、気性が荒いので大変だったとのこと。お母さんのお写真の掲載をお願いしたところ、今日はきれいじゃないからダメよと了解はもらえませんでした。
デジタルトランスフォーメーション?

3代目の現店主さんに、今後はどのようなお店をしていきたいのかお尋ねしました。
「なにも変わらなくてよいんです。それがうちに求められていること」
お会計も算盤で。世の中せわしくDX化と言われていますが、変わらないということの大切さに気づきます