
住宅街の片隅にぽつんと灯る灯り。気にはなるけれど、勇気が出ずに素通りしてしまう。神奈川県横浜市・大口の『PUB高砂』も、そんなお店の扉のひとつでした。どこか懐かしく、それでいて少し敷居が高い。そして初めて開ける扉にはいつも少しの緊張が伴います。
扉を開けた先に星屑のステージ

中に入ると、天井には小さな星のようにきらめく電飾が。深いロイヤルブルーのベロアのソファーは、品格と温かさを同時に感じさせ、長い年月を過ごしてきた店だとすぐに分かりますが、古びた感じはせず、むしろ洗練されています。

「飲み物は1杯1000円、ボトルなら5000円からですよ」と声をかけてくれたのは、控えめながらも優しさが滲む女性のスタッフさん。その穏やかな物腰に緊張がほどけていきます。



そして、店の奥から現れたのは白いエナメル靴を履きこなしたオーナーのマスター。聞けば、お店は56年目だといいます。入れ替わりの激しい飲食業界で、半世紀以上もお店が続く秘訣を聞いてみると、マスターが語り出したのはご自身の人生。これが最高の酒のアテになるのでした。