魚料理からメイン、デザートまで佐賀を食べ尽くす。美しい皿と料理の競演

こちらは魚料理の3品。乳白色の素地に鮮やかな色絵が施された美しい皿で登場したのは、生の刺身を卵黄を使ったソースとピリ辛の醬(ジャン)でいただく「鯖」。分葱の油と削ったカシューナッツも絶妙なアクセントになっています。
「穴子 佐賀海苔」は穴子のベニエ(フランス風の天ぷら)に、佐賀海苔と嬉野のほうじ茶を使ったソースを合わせた一品。ふっくらと淡白な穴子はそれだけでもしみじみ美味しいですが、力強い海苔とほうじ茶の香りをまとって一気に深い味わいになっています。

「アオリイカ 牡蠣」は、ほうれん草と小松菜のサラダ仕立て。中にはソースのように葉っぱとからめてもらうためのマリネした牡蠣、アボカドやヨーグルトと合わせたアオリイカが仕込まれています。牡蠣とアオリイカは有明海に面する太良町から。海と大地の滋味の競演です。

深い黒色の器に白い泡。白黒のコントラストが印象的な料理がやってきました。
穴に鶏ひき肉を詰めたレンコンは鶏と豚の出汁でホクホクに蒸し上げられています。泡の正体はアサリ出汁をベースにした白子のソース。口当たりはやさしくも、噛み締めるほどに力強く広がるコクがたまりません。

口直しは、ユズの酸味が効いたジュレ状の出汁でいただく「そうめん」。使っているのは神埼市名産の神埼そうめんです。
メインは佐賀で盛んに飼養されている「みつせ鶏」

メインはじっくりローストされた「みつせ鶏」。皮目は肉醤を塗ってカリリと香ばしく焼き上げ、身の方はニラのペーストを塗って瑞々しく仕上げています。鶏ってしみじみ美味しいなあと、思わずため息が漏れる一皿!
〆は滋味深きスパイスカレーを
![「カレー」。器は中里太郎右衛門陶房 [食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/01/20250131-saga17.jpg)
〆の食事はイノシシのスパイスカレー。今回のコースで出た野菜の切れ端の出汁でじっくり煮込まれたカレーを、キャロットラペとたくさんのパクチーと一緒にいただきます。お米ももちろん佐賀県産。土鍋でパッツリ炊かれた甘味の強いごはんは、スパイシーなカレーと相性抜群です。
デザートは佐賀食材の愛が詰まった3皿!

増永シェフは今回のレシピ考案のためにリサーチを重ねる中で、数々の優れた佐賀食材への愛情を募らせたあまり、メニューはどんどん増えてしまったそうです。ここまでですでに13品。デザートもなんと3種用意されていました。
1つ目がマリネしたデコポンとブランマンジェをデコポンのジャムと共にいただく一品。甘味と酸味のバランスが素晴らしいデコポンの持ち味を堪能できます。
2つ目はアイスクリームデザート。餅米と甘酒で作ったアイスクリームにやはり酒粕で作ったクランブルをトッピングしています。キャラメルソースも甘酒で作ったもの。甘酒づくしの一品です。
最後は今回、増永さんの高校時代の先輩で、佐賀県伊万里市のカフェ「LIB COFFEE IMARI」でパティシエとして働いている松尾和泉さんが焼いたプティフール。お菓子作りで余ってしまう卵白と酒粕を使ってふっくらと焼き上げられています。
カレーですでにお腹いっぱいでしたが、デザートも自然で軽やかな美味しさなので、ペロリと平らげてしまいました。

増永シェフは、今回のイベントでの気づきについてこう話します。
「以前から感じていたことですが、佐賀の食材は“力強い”と改めて実感しました。トマトはトマトらしく、ナスはナスらしく、ただ甘いだけ、食べやすいだけではなく、しっかりした存在感があるという印象。僕はそんな佐賀食材で料理をすると、とてもしっくりくるとう感覚があります。一つひとつの素材がすでに完成されたものなので、僕の仕事はその持ち味を壊さずに寄り添うこと。試作も楽しすぎて、ついこんなに品数が多くなってしまったのですが(笑)」
園田さんも佐賀への想いを強くしました。
「子どもの頃から両親によく佐賀へ遊びに連れて行ってもらいました。佐賀は文化も人柄も芯が強いというイメージ。増永さんが佐賀食材が力強いと言うのもよく分かります。正直、佐賀産の素材でドリンクを構成するだけになってしまわないか不安な部分もありましたが、増永さんの試食会で不安は一気に解消されました。増永さんの料理は、佐賀食材を生かす増永さんならではの料理だったから。増永さんの料理に合わせるのが私の役目だと、はっきりとした軸ができたからです。とても貴重なチャレンジをさせていただきました」
スタッフの皆さんの生き生きとした笑顔は、いかに大きな手応えを得られたかを物語っています。
それにしても、美味しかった! 楽しかった!!
●増永琉聖(ますながりゅうせい)
1998年佐賀県佐賀市生まれ。佐賀県立牛津高校を卒業後、2016年オーグードゥジュールメルヴェイユ博多に勤務。小岸明寛シェフ(太良町出身)のもとで研鑽を積み、2018年、「arita huis」(佐賀)に勤務、2020年よりヘッドシェフを務める。その後、福岡のイノベーティブレストラン「nishimura takahito restaurant」(福岡)のヘッドシェフに抜擢される。今年7月に同店を退職し、一旦レストランを離れ、福岡のパン業界を牽引する「パンストック」に勤務。2024年12月、パティスリー「ravi」(福岡)をオープン。
●⚫︎園田静香(そのだしずか)
1995年福岡県大牟田市生まれ。中村調理製菓専門学校(福岡)卒業後、東京都内のレストランに勤務。日本酒業界のカリスマ・千葉麻里絵氏の日本酒アプローチに惹かれ、「GEM by moto」(東京)に入社。千葉氏が考案する口内調味や日本酒ペアリングのスキルを学ぶ。その後、千葉氏の独立とともに「EUREKA!」(東京)立ち上げに参加。同店の店長として従事。
(撮影◎水田秀樹、文◎渡辺高)