佐賀県の自然と伝統がひと皿に凝縮!「USEUM SAGA」イベントに参加してみた

佐賀県の自然と伝統がひと皿に凝縮!「USEUM SAGA」イベントに参加してみた
食楽web

「USEUM SAGA」というガストロノミーイベントをご存じでしょうか。こちら佐賀県を代表する料理人が、人間国宝の作品をはじめ美術館に展示されるような見事な器と、佐賀の豊かな食材を使って自らの技術や感性を発信するイベントです。

 佐賀といえば、有田焼や唐津焼をはじめ、伝統的な焼き物の里が点在。人間国宝や伝統的な技法を受け継ぐ窯元はもちろん、現在ではデジタルを活用する窯元や若手作家などが台頭し、「伝統」にとどまらない前衛的かつ個性的な作品などが全国的に注目を集めています。そんな見事な器を使って自らの料理を完成させる。これには料理人ならずとも心躍りますよね。

 第3弾となった今回の舞台は、日本三大美肌の湯として知られる嬉野温泉にある旅館『和多屋別荘』。会場となった『SHINZO』は、その和多屋別荘の敷地内に建つ瀟洒(しょうしゃ)な一軒家レストランです。イベント開催の報せを聞いた編集部、「これって佐賀県のさまざまな魅力をひと皿に凝縮した料理が体験できる絶好の機会では?」ということで、佐賀県・嬉野温泉へ直行しました。

「佐賀の森」をテーマに気鋭のシェフが競演!

「USEUM SAGA」の舞台となったラボレストラン『SHINZO』
「USEUM SAGA」の舞台となったラボレストラン『SHINZO』

 テーブルに着いてしばらくすると、今回供される料理やデザートを担当するシェフ2名が登壇し、テーマが「佐賀の森」であることを発表。「温暖化による自然災害や生態系バランスの崩壊、さらには森を管理する人たちの減少などのさまざまな要因により、日本人に馴染み深い『里山』が失われつつある現実を知ってほしい」というお二人の熱い想いが語られました。

池田孝志シェフ(左)と加藤峰子シェフパティシエ
池田孝志シェフ(左)と加藤峰子シェフパティシエ

 料理を担当する池田孝志さんは22歳で渡仏し、パリの星付きレストランを皮切りにデンマークやスペインなどの著名なレストランで研鑽を積んだ気鋭のシェフ。現在は、佐賀県有田町にある『arita huis』で腕を奮っています。一方、デザートを担当するのは、イタリアの名だたるミシュラン獲得店で活躍してきたシェフパティシエの加藤峰子さん。彼女は東京・銀座にある人気イノベーティブレストラン『FARO』で、日本の和や自然をリスペクトしたデザートを手掛けています。そんな2人の才能が創り出す珠玉の料理の数々に、今から心が踊ります。

 供される料理はコース仕立てで全10皿。料理は、佐賀が誇る陶磁器をはじめとする器に盛り付けられ、皿ごとに佐賀県産の地酒や各国産のワインとのマリアージュが楽しめます。ペアリングドリンクを担当するのは『FARO』のソムリエ・桑原克也氏。いずれも、食材選びや使い方はもちろん盛り付けまで、これまでに出会ったことのないユニークかつ前衛的な料理がほとんどで、まさに目からウロコ状態。ただ、驚きの後にはしっかりと絶妙な美味しさが感じられるあたりはさすがです。今回、すべての料理を紹介できないのが残念ですが、とくに印象に残った料理を数皿ご紹介しましょう。

サプライズと口福の連続で佐賀の魅力を満喫

「肥前吉田焼400、嬉野茶500、嬉野温泉1300」
「肥前吉田焼400、嬉野茶500、嬉野温泉1300」

 食前酒として供されたピノ・ノワール主体のシャンパーニュで喉を潤します。するとまず登場した料理がこちら。

 アミューズ。左から、メレンゲの中にビーツのピュレを配したもの。有田焼の原料となる陶石を器に見立てています。中央は嬉野温泉をモチーフにした温泉湯豆腐。紫蘇の香りのハーブがアクセントに。そして右は氷出しのお茶に、茶の実から抽出したオイルを加えたもので、凝縮された旨味が楽しめました。

「同調 自然-芸術」
「同調 自然-芸術」

 有田焼の様式美を確立させた柿右衛門窯の器に配されたさまざまなハーブや野菜、野草の前菜。そこに乾燥させたアマランサスがトッピング。20種類以上のハーブから作ったソースをかけていただきます。複雑な味わいのあとに来る爽やかな後味が絶品でした。

「GuziとGuza」
「GuziとGuza」

 藍色の鮮やかな器に映えるメインの魚料理は、ぐじ(甘鯛)を佐賀県三瀬村でつくられたどぶろく「GUZA」に漬け込み、火入れを行ったもの。その際に出た出汁もスープに使われており、ぐじならではの上品な旨みが引き立っています。

「エミュー 価値ある放棄地」
「エミュー 価値ある放棄地」

 肉料理は佐賀県基山町の耕作放棄地で飼育されたエミューに熟成酒粕と野菜くずから作った灰をまぶし、有田焼の器の中に入れて低温調理したもの。鶏肉とは思えない、濃厚な赤身肉の旨みがインパクト大です。

「花のタルト」
「花のタルト」

 コースの締めに供されたのが、色とりどりの愛らしい花やハーブを素材に使ったタルト。まず口中で華やかな香りが広がり、次にカスタードクリームのまろやかな旨みが、食材と意外なほどマッチしているのを楽しめます。器は有田焼の伝統を踏襲しながらも新しいデザインアプローチを続けている「1616arita/japan」の作品。

 料理が供されるたびに、まず見た目に仰天し、次に香りや味わいにびっくり、そして最後は美味しさに納得、といった具合でまさに驚きと美味しさの連続。気がつけば、あっという間に至福の時間が過ぎてしまいました。

 今回、イベントに参加して、佐賀という土地の豊かさや奥深さを実感できたとともに、伝統と革新を見事に融合させた料理は、まさに極上のエンターテインメントであるという点を改めて認識することができました。これは次回にもぜひ期待したいところです。

伝統とモダンが融合した「和多屋別荘」のエントランス
伝統とモダンが融合した「和多屋別荘」のエントランス

 ちなみに会場となった『和多屋別荘』は、嬉野川沿いに約2万坪という広大な敷地を擁する嬉野温泉を代表する温泉旅館。自慢の“美肌の湯”で日常の疲れを癒やしながら、ゆったり佐賀の美食を満喫するのもオススメですよ。

和多屋別荘

https://wataya.co.jp/