身体の冷えによる自律神経のバランスの乱れが女性の健康不調につながる

――女性ホルモンの乱れとは何でしょうか?
石原先生:そもそも女性ホルモンとは、主に卵巣から分泌されるホルモンで、女性の健康を保つ役割があります。「エストロゲン」と「プロゲステロン」の2種類があり、月経に連動して分泌量が周期的に変化し、排卵や妊娠の環境を整えます。この2つのホルモンのバランスが崩れたり、分泌量が増減する状態を「女性ホルモンの乱れ」と呼びます。
――女性ホルモンが乱れると、どういったこと症状がでますか?
石原先生:生理痛、PMS、頭痛、肌荒れ、食欲増加、気分の落ち込みなどが起こります。また、更年期障害はエストロゲンの乱れと低下が主な原因とされています。女性ホルモンの乱れの原因には、ストレスや生活習慣の乱れ、加齢によるホルモン減少が大きく関係しています。
――体が冷えることでも同じような症状が出るのでしょうか?
石原先生:身体が冷えると血流が悪化し、熱を逃さないよう交感神経が優位になって自律神経が乱れ、女性ホルモンの分泌にも影響します。さらに、冬は暖房と外気温の寒暖差が自律神経の乱れを招くため、「身体の冷え」と「室内外の寒暖差」は、女性ホルモンの乱れの原因になりますね。
女性ホルモンの乱れを改善する高発酵性食物繊維と短鎖脂肪酸

石原先生:腸内細菌は女性ホルモンのバランスに影響を与えるため、腸内環境を整えることが重要です。その方法の一つが「発酵性食物繊維」の摂取。発酵性食物繊維は善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やして悪玉菌を減らしたり、腸管のバリア機能を高めたりします。その結果、腸内環境を改善し、女性ホルモンのバランス調整に効果が期待できます。

石原先生:また、発酵性食物繊維は腸内細菌によって「短鎖脂肪酸」に代謝され、この短鎖脂肪酸が腸内環境を整えて、便秘や下痢の改善にも役立つことが分かっています。特に、より発酵性が高い「高発酵性食物繊維」の摂取がおすすめ。発酵性が高いほど短鎖脂肪酸の生成が促され、効果が期待できます。さらに、「貧血には鉄分を含むレバーが効果的」といったように、自分の悩みに合った成分を含む食材を選ぶことで、より高い効果が期待できます。
肌荒れやPMSにも効く高発酵性食物繊維を含む食べ物とは?
![代表的な高発酵性食物繊維「グアー豆食物繊維」「イヌリン」「水溶性ペクチン」 [食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/01/20250124-cyoukatu05.jpg)
――では、具体的にはどういった食材が適していますか?
石原先生:それぞれの悩みに合わせたおすすめの食材を紹介します。
1.果物類【肌荒れ・ダイエット効果】
果物はビタミンが豊富で肌質改善が期待できるほか、脂質やカロリーが低いため、お菓子の代わりに食べることでダイエット効果も。また、生理前の食欲が増す時期に果物を摂ることで、ダイエットや腸内環境の改善、さらには女性ホルモンを整える効果が期待できます。キウイ、リンゴ、オレンジなどには高発酵性食物繊維が多く含まれています。
2.豆類【肌の老化・PMS・生理痛】
豆類には、シミ・しわ・乾燥など肌トラブルを緩和する成分が含まれています。特に「イソフラボン」は女性ホルモンと似た働きをし、PMSや生理痛にも効果が期待できます。また、豆類の一種「グアー豆」に含まれるグアー豆食物繊維は、高発酵性食物繊維として注目されており、肌の保湿効果も認められています。乾燥する冬におすすめで、最近ではコンビニの商品にも取り入れられ、手軽に摂取できます。
高発酵性食物繊維の代表といわれる、グア―豆食物繊維とは?

石原先生がおすすめする食材の中に登場した「グアー豆」は、インドやパキスタンで育つ植物。そのグアー豆から採れるグアーガムを酵素分解して低粘度化した植物性食物繊維が「グアー豆食物繊維」です。水溶性食物繊維であるグアー豆食物繊維は、善玉菌の栄養源となり、短鎖脂肪酸を効率的に生成することで腸内環境を整える働きがあります。
便秘と下痢の両方に効果的な整腸作用を持つほか、グアー豆食物繊維は発酵スピードが緩やかなため、IBS(過敏性腸症候群)や食物繊維による膨満感が気になる人にも適しており、腸活において注目の成分です。
●プロフィール
三重大学大学院生物資源学研究科 連携教授 石原則幸
1989年3月 三重大学大学院農学研究科修士課程農芸化学専攻修了、2005年3月 三重大学大学院より博士(学術)を授与、民間企業にて機能性食品に関する研究開発に従事。2022年12月より三重大学大学院生物資源学研究科 連携教授。機能性食品素材である食物繊維、緑茶カテキン、鶏卵由来の生理活性成分に関連した商品化に携わっている。また、腸内細菌や栄養学の分野での知見も深い。