骨までかじれる柔らかさと塩の絶妙な風味がたまらない!

待つこと15分ほど。待ちに待った半身揚げが登場しました。お皿に盛り付けられた状態で出てくるかと思いきや、スタッフさんがザク切りキャベツと一緒にバットで運んできてくれます。解体用にハサミとトングが用意されていて、この大きなバットの上で解体できるようになっているわけですね。こういうスタイル、楽しくて好きです。

まずはザク切りキャベツをお皿に敷きつめ、そこに半身揚げをのせます。「こうすることで半身揚げの味がキャベツにも移るので美味しく召し上がっていただけます」とスタッフさん。
さっそくいただきましょう。まずはセオリーに従ってあっさりしたムネ肉から。表面がカリッと香ばしく仕上がっています。ひと口目から肉の旨みがグングン迫ってくる、ほっくりとした味わい。ムネ肉の美味しさが十二分に表れています。圧力フライ仕上げということもあってか、小さな骨までバリバリと食べられるのもスゴい!

店長の梅澤秀一さんによれば、お店ではスタッフさんが全国各地で美味しいものを食べ歩き、それを研究してメニュー化することも多いそうで、この半身揚げも北海道の名店の味に魅せられたのがきっかけで生まれたとのこと。美味しいものが好きな人が作るものはやっぱり美味しいです。
鶏肉はブライン液(水+塩+砂糖)に漬け込んで肉をやわらかくジューシーにし、その後に“干す”工程も加えているそう。「冷蔵庫でしばらく寝かせることで、揚げた時に表面がカリッとした食感に仕上がるんです」と梅澤店長。まだムネ肉だけを食べた段階でしたが、その効果が実によくわかりました。

続いてモモ肉。閉じ込められた肉汁が表面の皮にジワッと染み込んで“カリしっとり”した食感になっていて、これまたウマい! 香ばしさの中に肉の旨みがしっかり感じられ、この皮だけでも満足できそうです。骨付き部分は、より旨みが強く、肉の“骨ばなれ”も良好。肉汁たっぷりの肉がホロリとはがれ、舌の上で滑っていくよう。これも圧力フライヤー、ブライン液、そして乾燥工程のなせるワザなのでしょう。

下味のブライン液を除けば、味付けは塩のみですが、その塩梅が実に素晴らしい。肉の旨みを邪魔しない存在感。なのに時々、口の中に塩の風味が瞬間的に現われては消えていく、刹那的な味の盛り上がり。これがドキリとしてしまうほどの美味しさで、それをまた味わいたくてひたすら肉にかぶりついてしまうのでした。

完食後はザク切りキャベツをいただきます。キャベツの甘みに半身揚げの塩味がほんのりと移って、これまた美味中の美味。おつまみにもいけそうです。
●著者プロフィール
松本壮平
ライター・編集者。一般社団法人日本唐揚協会認定カラアゲニスト。生まれも育ちも「からあげの聖地」である大分県中津市。美味しいからあげを求めて東奔西走する「から活=からあげ探索活動」に明け暮れている。