誰もがトリコになる骨付丸鶏スープカレー

さまざまな事情があり(それは後述するとして)、店舗を構えることになったが、移動販売の時と同じく1800円~。もっとも高いのは「頂点」で2500円。来店する人のほとんどは2000円の「マボロシ」を注文する。

「僕は昭和40年代頃に出されていた元祖札幌のスープカレーを作りたくて、カレー屋を始めたんです。元祖とは、鶏の旨みを味わうスープ。それを再現したくて、国産の一羽丸ごとの鶏と利尻昆布から丁寧に出汁をとります。ちなみに丸鶏は、刺身に使えるほど鮮度のよいものです。また、具材に入れる鶏は、国産骨付鶏をフレンチの手法“コンフィ”のようにゆっくり揚げ煮したものを合わせます」
この骨つきコンフィ、そんじょそこらのフレンチより美味しいのでは? と思うくらいホロホロで、旨みが凝縮されている。鶏と一緒に揚げたジャガイモも入っていて、鶏の旨味がしっかり移っていて香ばしい。もはやカレーに入っているジャガイモの概念を超える旨さ。
「札幌のスープカレーは、インドやスリランカのカレーのようにスパイス使いの巧みさ味わうというよりも、出汁を味わうカレー」だと言う平中さん。だから出汁にとことんこだわるのである。

「東京のスープカレー屋で、国産鶏を使っているところは僕が知っている限りないですし、また、具材の鶏肉もスープをとった出がらし肉を使うところが多いです。だからこそ、僕は鶏にこだわりたかった。でも、最初、900円で売っていたときに、一部のお客さんに“高い”、“遅い”などと言われたことがあって。材料にお金をかけ、仕込みに時間をかけているんだから、と開き直り、だったらもっとわかりやすく、さらに仕入れのコストと時間をかけて1800円にしたら、びっくりするくらい売れたんですよ」

移動販売の時も今も、注文が入ってから野菜を素揚げするので時間もかかる。待たせることもしょっちゅうだ。でも、「待ってでも食べたい」と言ってくれるお客さんばかりだそう。
「逆説法じゃないですが、“食べたい人はどうぞ”という強気な姿勢を貫いているんです。でも、そのインパクトのおかげで、お客さんとお話しするきっかけが増え、“カレー・コミュニケーション”がきちんととれているなと思います」