
レトロなパッケージに包まれ、キラキラと輝く愛らしいケーキ。一目見た瞬間から、大切な人の顔が浮かび、「手みやげに持っていったら喜ぶだろうな」とほっこり笑みを浮かべてしまう…そんなお菓子は意外と少ないのではないでしょうか?

こちらは、和歌山・田辺市の老舗菓子店『鈴屋』が作る名物「デラックスケーキ」。実はこのケーキ、岸朝子さんの名著『全国五つ星の手みやげ』にも掲載され、秋篠宮殿下・紀子妃殿下もお召し上がりになった知る人ぞ知る銘菓なのです。
![[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/05/20250524-deraxcake03.jpg)
手のひらにちょこんと乗る、四角い常温のケーキ。懐かしさを覚えるパッケージを開けると、ホワイトチョコレートでコーティングされたケーキがお目見え。この佇まいさえ、愛らしいですよね。
大正13年創業、老舗の菓子店『鈴屋』
『鈴屋』は大正13年創業。和菓子専門店として始まり、今では和洋折衷、地域の産物を使った独自のお菓子を作り続けています。さまざまなおいしい和菓子も揃いますが、中でも柚餡と粒餡のふたつのもなかが入った「辨慶の釜(弁慶の釜)」が紀州田辺の銘菓として知られています。

「デラックスケーキは洋菓子に展開を進めたときに『常温で日々食べていただけるお菓子を』とできたものなんです。それが53年ほど前。その頃、コーティングに使っているホワイトチョコレートはほとんど知られてないような時代でした」と話すのは鈴屋の店主・鈴木一弘さん。そこから作り方や配合は変わっていないと言います。

間に挟まっているジャムには、和菓子屋の名残を感じさせる白餡の材料、白インゲン豆を使用。これがホワイトチョコととても相性が良い。一口味わうと、とにかく上品。重めのカステラに仕上げたとは思えない軽やかな口どけ、ジャムの味わいが程よく、深い旨味を感じさせてくれます。洋菓子にはあまり使わない「滋味深い」という言葉さえ浮かんできました。
ちなみに、パッケージに書いてある「デラベール」が昔の本名。鈴屋からきているそうで、真ん中は鈴もデザインされています。今ではデラックスケーキという名称で通っていますが、「デラベールがね、すごく美味しいの」なんて通ぶってみるのもいいかもしれません(笑)。
人気の「はしっ子」も!

昨今大ブームのお菓子のはしっこ。ここにもありました。デラックスケーキのホワイトチョコをより堪能したい人はこちらで気軽に楽しむのもいいですね。カジュアルなパッケージもお土産にぴったり!
一緒に味わってほしい逸品「レモンケーキ」

もう一つ、感動した洋菓子がありました。それが、ここ数年、全国でじわじわ人気を博しているレモンケーキ。こちらも鈴屋の一品はひと味違っていました。
「30、40年前にレモンの形をした鉄板を売る行商人が全国を回っていて、その時にうちも含めてあちこちのお菓子屋さんが作りはじめたんです」と鈴木さん。
鈴屋のレモンケーキは、全体をホワイトチョコでコーティングし、バニラクリームを入れているのが他とは違うところ。デラックスケーキの余韻を感じるカステラの優しさ、そこにバニラクリームが合わさるとなんとも軽やか。甘いお菓子は、ささやかな幸せを呼んでくれますね。
熊野古道、白浜…観光名所のついでに


街に根付いた老舗の菓子店の佇まい。そこに並ぶ銘菓たちをじっくりと選ぶ楽しみが『鈴屋』にはありました。
田辺市は観光名所として知られる世界遺産の熊野古道や南紀を代表する温泉地・白浜温泉にもアクセスできる場所。観光のついでに足を伸ばしてみるのもおすすめです。もちろん、「デラックスケーキ」はお取り寄せもできるので、すぐに味わってみたい方はチェックしてみてくださいね。
(撮影・文◎草地麻巳)