思わずご飯で追いかけてしまう美味しさのブタカラ

このブタカラ、豚肩ロース肉に片栗粉をまぶしてラードで揚げたものに、醤油や酢、ニンニク、ショウガなどで味付けしたタレをからめているそうです。待っている間に、肉を揚げる心地の良い音がBGMのように聞こえてきます。そして漂うラードのいい香り。これがまた、どことなく懐かしさを感じる良い香りなのです。
待つこと数分で登場したブタカラ定食、まずはその量に度肝を抜かれそうになります! 200gほどあるそうで、一瞬完食できるか不安になってしまうほどにてんこ盛り。ブタカラと一緒に千切りキャベツが添えられています。しかし添えられている、というよりも波打ち際のキャベツの防波堤に、海から現れたブタカラ軍団が押し寄せているような印象。これはこのキャベツも味が染みて絶対ウマいに違いない!

さっそくひと口いってみます。サクッとした歯ざわりの衣。その先に待っている肉の旨みと柔らかさが相まって“サクトロ”食感とでも表現したくなる噛みごたえです。味はといえば、ラードのコクのある風味が口いっぱいに広がったかと思うと、それが砂漠にまいた水のごとく舌に吸い込まれていきます。旨っ!

あまりの美味しさに、無意識に肉を飲み込んでしまっていた筆者。反射的にご飯で追いかけます。ご飯が進む、というより白米のアシストが必須の味。舌が吸収しきれなかったブタカラの味を、ご飯が見事に集めて胃袋に送り出してくれます。ブタカラ⇒ご飯⇒ブタカラ⇒ご飯…という無限ループが止まりません!

ちなみに、ブタカラにタルタルソースをつけると、こってり感がやや和らぎ、ほんのり甘みも出てきます。玉子感アリアリで酸味がひかえめなこのタルタルソース、自家製の胡瓜の糠漬けを長めに漬けて古漬けにしたものを、ピクルス代わりに使っているんだとか。豚肉の旨味をさらに引き立ててくれる超優秀バイプレーヤーでした。
かつお節と煮干しの旨みたっぷりの味噌汁も絶品!

そして筆者がもうひとつ驚いたのは味噌汁の旨さ。定食に付いてくる味噌汁が美味しいと、思わずテンションが上がりますよね。「かつおなど数種類のけずり節でダシをとっています」との店主・白石さんの言葉通り、ダシの旨み・風味が実に爽やかで滋味深い味わいの一杯。こってりしたブタカラとギャップがあり、これまた相性バツグン。ブタカラ⇒ご飯⇒ブタカラ⇒味噌汁…という流れもまた妙なり!

なんのかんの言って、あっという間に平らげてしまいました。まだいけるな…と思いつつ壁のメニューに目をやると「肉特盛 +400円で出来ます!」の文字。ええ~~~! そんなのあったなんて、先に言ってよ~~! と心のなかで雄叫びを上げるも時すでに遅し。そう、よく見ていなかった筆者が悪いんです。
一般に、豚肉や牛肉は鶏肉に比べて水分が少ないため、からあげには向いていないのだ、などとまことしやかに語られたりしますが、イヤイヤ、こんな美味しい豚肉のからあげが食べられるじゃありませんか。まさに国宝級の美味しさでした。次回は肉特盛だ! そう心に誓ってお店をあとにしたのでした。
(取材・文◎松本壮平)