焙煎機で1日中、豆を焙り、それを販売しつつ、美味しいコーヒーを淹れてくれるという『カフェ・ベルニーニ』。店主は、様々なメディアでコーヒーの淹れ方を教えているマイスター。そこで、「美味しいコーヒーの淹れ方」を聞きに向かった。

『カフェ・ベルニーニ』は、都営地下鉄三田線「志村三丁目」駅から徒歩3分ほどの場所にある。19年前にオープンしたと聞いていたので、レトロな喫茶店を想像していたが、ヨーロッパの街角にあるような可愛い建物。店内に入ると、まず、正面奥にある大きな焙煎機が目に飛び込んでくる。


店内はのんびりした空気。ただ、カウンターにいるお客さんと、ご主人・岩崎俊雄さんが、何やらコーヒーについて真剣に話し込んでいる。面白そうなので聞き耳を立てつつ、窓辺に座った。
隣接する「城山公園」の緑を眺めることができる。その絶景ポジションで、店名が付いている「ベルニーニ・ブレンド」を注文してみた。静かに鳴るピアノの音色に癒される。

登場したコーヒーは、透き通るような黒褐色で、泡一つ立っていない。そのまま一口飲んでみると、不思議と甘くはなやかな香りが鼻から抜けていく。まろやかな“丸い味”というのだろうか。そして何より、コーヒー特有の重さがなく、“軽い”感じがする。いくらでも飲めるような……。
先ほどの、岩崎さんとお客さんの会話が耳に入ってきた。
「一番大事なことは、いい豆を手に入れることなんです。豆にも産地や等級があり、その最上級のランクの豆のことです。お米もそうでしょ。ランクの高いお米はそもそも美味しいように、コーヒー豆も一緒なんです」と岩崎さん。
「さらに、お客さんが買う場合にはもう1つ条件がありまして、焙煎の技術も高い豆であることです。豆は、種類ごとに一番美味しい焙煎状態というのがあり、それを熟知した焙煎技術が大事なんですよ。例えば、浅煎りとか深煎りなどと言いますが、コロンビアなら、浅くもなく、深くもないちょうど中間が一番美味しい。これを深煎りにしたら、せっかくの美味しい豆も美味しくなくなるんです」
「なるほど」とお客さんが黙って頷く。ふんふん。なるほど。

確かめるようにもう1口。なめらかに舌に広がり、口の中でふわりと馴染む。それから、ゆっくりとゴクリ。すると、また岩崎さんの言葉が耳に飛び込んできた。
「コーヒーはね、ゆっくりと焦らすように飲むといいですよ。舌の色んなところで感じると、味がよくわかってきますよ」
確かに。少しずつ苦味や酸味を感じ始め、最後には、口の中に、ほんのりと甘さが残るようだ。「苦味、酸味、甘味」のどれかが突出しているわけでもないが、どれも少しずつ感じて、バランスがいい。渋み、雑味といった「えぐ味」は全くない。だから最初に“丸い味”と感じたのだろう。