
東京・浅草橋の一角に、創業から半世紀以上もの間、地元で愛され続けている洋食店があります。その名も『洋食 大吉』、1970年創業の老舗で、これぞ日本の洋食と呼ぶにふさわしい味を守り続けています。

食通として知られる作家・池波正太郎も通い、その味と雰囲気を高く評価したと伝えられる名店で、店構えは飾り気がなく、暖簾をくぐると、昔ながらの洋食屋らしいアットホームな空気が広がります。
この日注文したのは、店の看板メニューでもある「チキンカツ」と「ハンバーグ」。どちらも堂々としたボリュームで、食欲を刺激するビジュアルです。

特に印象的なのが、長年受け継がれてきた自家製デミグラスソース。じっくりと煮詰められたそのソースは、濃厚でありながらしつこくなく、深いコクとまろやかな酸味が絶妙なバランスを保っています。

チキンカツは、厚みのある鶏肉にしっかりと下味がつけられ、外はザクザクと香ばしく、中は驚くほどジューシー。衣の食感と肉の旨味が一体となり、ソースの濃厚さに負けない存在感を放ちます。
![ザクザクの衣と濃密なソースの味が最高[食楽web]](https://cdn.asagei.com/syokuraku/uploads/2025/10/20251103daikichi05.jpg)
ナイフを入れた瞬間に肉汁がじゅわっとあふれるハンバーグは、ランチでも人気の一皿。挽肉の粒立ちを残した食感と、ふっくらとした焼き上がりのバランスが見事で、これを食べたかった……とじっくりと噛みしめたくなる美味しさです。
きっと他のメニューも素晴らしいのでしょう。一口ごとに、「これが洋食だ」と感じられる味わいがここにあります。
(撮影・文◎亀井亜衣子)









