老舗の卵とろとろのオムライスは美味しいのか?
目指す『好成軒』は、東京メトロ銀座線・三越前駅から徒歩1分の場所にありました。大正8年(1919年)に創業したという老舗洋食店です。数年前に創業した場所から移転したそうで、建物自体にはそこまで歴史を感じませんが、店先にデカデカと掲げられた大きな家紋に重厚感を感じます。
そして「卵ふわとろ一派」と思しき、スーツ姿のビジネスマンのおじさんたちが続々と店に入っていくのを目撃。かなり人気のようです。
ランチメニューを見ると、日替わりランチのフライ盛り合わせや鮭といくらの親子丼、トンカツ、カキフライと並び、ウワサの「とろとろ玉子のオムライス」もありました。いずれも1050円です。ちなみに「とろとろ玉子のオムライス(エビフライ付)」は1300円。
洋食屋のフライ盛り合わせにも惹かれますが、今回はふわとろオムライスを視察にきたので、エビフライ付きのオムライスを注文しました。
さて、「とろとろ玉子オムライス」が調理されている間に、改めて筆者が“卵薄焼き派”である理由を考えてみました。そもそもオムライスは、“ライスをオムレツで包む”という高難度の技術が必要な料理です。実際、筆者は自宅でオムライスを作ると、たいてい包む前に卵が破けます。ゆえに、一分のスキもなく美しく包まれたお店の卵うす焼きオムライスを見ると、感動を禁じ得ないのです。
対して、“卵ふわとろタイプ”は、チキンライスに半熟オムレツをのせるタイプがほとんど。つまり、“包む”という難度Cの大技を放棄し、食感やソースなどの小技に頼っているわけです。きらびやかな雰囲気の割に、量は少なめで満足感も低い。ズルいなあと思うわけです。
などと屁理屈をこねている間に、「とろとろ玉子のオムライス(エビフライ付)」が運ばれてきました。予想通り、オムライスにデミグラスソースをたっぷりかけたスタイル。というか、オムレツ型ですらなく、原型がわからないほどひたすらにトロトロ。でも、悔しいかな、めちゃくちゃ美味しそう。というわけで、いざ実食です。
スプーンを入れてみると、薄焼き卵を割るような力はまったく不要。何の反発もなくスプーンが皿の底に着きます。とろとろの卵と共に、薄めのケチャップ味のチキンライスがいとも簡単にすくえます。
ひと口食べてみると、卵がふんわり、ごはん一粒ひと粒を包むかのごとくまとわりついてきます。そして追随する濃厚なデミグラスソースのコク。その後に続く旨み。これは、なかなかどうして、深い味がします。
友人が言っていたように、卵とチキンライス、そしてデミグラスソースが三位一体となり、なめらかな口触り、まろやかな卵の味、そしてソースの深いコクを生み出しています。美味しいうえに流し込むように食べられるので、スプーンが止まりません。
瞬く間に1/2、1/3と減っていくオムライス。ああ、もっとじっくり味わいたいのに、どんどんなくなっていく! 一度水を飲んで心を落ち着かせ、別皿のエビフライに目を向けます。
小ぶりですが、ピンと背筋が伸びた美しいエビフライ。噛むと衣はこんがりサクサクしていて、エビに当たると、プリっとした食感。衣の香ばしさとエビの旨みが最高です。再びとろとろオムライスを食べて、またカリッカリのエビフライ。これを交互に繰り返し、あっという間にフィニッシュ。いやー、文句ばっかり言ってスイマセン。最高でした。
というわけで、『好成軒』に来てみて、“卵ふわとろタイプ”の良さや醍醐味がよくわかりました。とろとろの卵とチキンライスの一体感。さらにこだわりデミグラスソースの味わい深さ。そして、卵かけご飯に通じる流し込み感。確かに止まらない美味しさでした。
特に今回は、老舗『好成軒』の名物料理たる絶品オムライスだったということも大きいでしょうが、他の卵ふわとろタイプもたまには食べてみようかな、と思った次第です。とはいえ、オムライスに関して筆者は相変わらず“卵うす焼き派”です。
(撮影・文◎土原亜子)
●SHOP INFO
店名:好成軒
住:東京都中央区日本橋室町1-13-4
TEL:03-3241-0613
営:11:00~14:30
17:00~21:00
休:日曜