本場の「燃麺(ランメン)」はここでしか味わえない!

さて、この店の奥深いところはまだある。ぜひ食べて欲しいのが「燃麺(ランメン)」だ。四川省の南部にある街・宜賓(イーピン)の名物麺で、これこそ、本場のまぜ麺。日本で本格的な「燃麺」を味わえるのは、実はここだけなのである。
具材は、豚のひき肉、長ネギ、芽菜(ヤーツェイ)、ピーナツ、フライドオニオン、唐辛子、山椒で、麺の下に醤油のようなすっきりしたタレが入っている。そこに熱々の油をかけているので、“燃麺“と呼ぶのだそう。出されたら、まずはしっかりと混ぜ、よ~く油とタレと具材を絡めて食べる。この麺の具材で欠かせないのが芽菜(ヤーツェイ)で、宜賓名物の漬物なのだ。その真っ黒なその漬物は、ザーサイと似て非なる、塩辛いわけではなく、コクと酸味が独特である。

ついでに言うと皆がよく知っている「担々麺」だが、最近では、本場は汁なしだということだけが一人歩きしているが、実は、この芽菜が入っていて初めて担々麺の味になるのだと菰田さんは言う。
「担々麺は日本でもかなり認知されているメニューですが、芽菜が入っていないのが多いですね。また、名前に“担ぐ”という文字が入っているように、中国では天秤棒で担いで売っていた麺料理。担いで売るんですから、本来は汁が入っていません。もちろん汁ありがダメなのではなく、各国・各地方の伝統料理が、様々な外国に伝わり、さらに、その国の料理人のフィルターを通して食べやすく変化することは大事だと思っていますよ」
という一方で、日本ではメジャーではない“宜賓燃麺”の本当の味を、まずは、日本にきちんと伝えるということも料理人の大事な役目だという。
「例えば、日本人は、“かんすい”を入れたモチモチの麺が好きですが、実はかんすいというのは、香りの邪魔をするんです。四川料理は特に香りが大事な料理。だから、うちでは本場と同じように卵麺を使います。こうした細かい他国の食文化をきちんと伝えることも、この店から発信できたらと思っているです」
これは、ただの事件どころではなかった。日本と四川をつなぐ国際的な大事件だったのだ。菰田シェフの対照的な思いが詰まった2つの麺、「火鍋ラーメン」と「宜賓燃麺」を味わい、この衝撃的な「食文化的革命」をぜひ感じて欲しい。
(取材・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:ファイヤーホール4000
住:東京都品川区東五反田1-25-19 東建島津山南ハイツ 107
TEL:03-6450-3384
営:11:30~14:45(14:15LO)
17:30~22:30(21:30LO)
休:月