
「困ったときの北千住」。そう思っているのは自分だけかもしれませんが、今宵はどこの酒場へくり出そう? と迷ったとき「北千住に来れば何とかなる」と思っている飲兵衛も少なくないはずです。北千住といえば、都内でも有数の酒場の密集地。西口のときわ通りを筆頭に駅前の路地を歩けば、そこかしこに魅力的な酒場と出会します。
明治創業の老舗酒場、本場関西の流れをくむ串カツ専門店、スタンディングのクラフトビール店、秀逸な肴を300円均一から楽しめる立ち飲み……。まぁ、なんとなしに北千住へ来たとしても、何かしらその日の気分にあった酒場を見つけ出せるのです。
※吉田マッスグとは……普段は本誌『食楽』の副編集長。酒場のカリスマ・吉田類氏が名付け親となり、酒場をめぐる時にだけ「吉田マッスグ」を名乗る。ここでは、その吉田マッスグが大衆酒場をテーマに、事実と妄想が交錯する酒場の物語を紹介していきます。

ということで、今宵の気分は? というと、ずばり煮込み! 北千住には東京三大煮込みの一角として知られる『大はし』がありますが、今宵向かったのは、創業45年になる『藤や』。こちらは、煮込みといっても、他ではなかなかお目にかかれない”串煮込み”スタイルです。カウンターの目の前の鍋でクツクツと火にかけられた串煮込みが、芳しい香りを漂わせながら、「食え!」と誘っています。