スパイスの威力がハンパない!!高円寺『青藍』の“香りを食べるカレー”の超絶テクニック

油をほとんど使わないカレー

 梶田さんは、以前は一般企業の会社員を勤めながら、高田馬場で夏限定の「間借りカレー」や「カレーイベント」で自慢のカレーを振る舞っていた。「身内レベルで好きなカレーを出していただけなんですが、この香りを食べるカレーがちょっとウケまして、その流れでなんとなく店をオープンしたんです」と笑う。でも、実に研究熱心。

「私自身、スパイスが大好きで、これを際立たせる方法を模索していたんです。スパイスというのは、熱を入れた瞬間がいちばん香り高く、広がるんです。ですから、ベースのカレーを作る際の最初だけ加えても、どうしても弱くなってしまうんです。そこで考えたのが後入れ方式なんですよ」

 また、この「スパイシーチキンカレー定食」には、他にもさまざまな工夫が施されている。例えば、カレーが辛すぎると個々のスパイスの香りを感じにくくなるので、辛みを抑えている。さらに「油分の多いスープは一瞬旨みを感じるものの、“コク”や“まったりした重さ”ばかりが強調されて、スパイスの爽やかな香りが感じにくくなるのではないか」ということで油もほとんど使っていない。油の代わりに、たまねぎ、緑黄色野菜、鶏ガラ、鰹、昆布といった和風出汁スープで旨みを出すようにしている。それに塩分もかなり控えているそうだ。

 さらに定食スタイルにした理由は、カレーだけではどうしても偏りがちな栄養バランスへの配慮に加え、「五味と食感も楽しめるように」とのこと。

「今日はアンチョビキャベツで旨みを、ニンジンのラぺで甘み・酸味・香ばしさを、柚子白菜で香りと食感を……といった具合に、いろいろな味を盛り込んでいます。満腹感もあるけど、女性でもペロリと残さずに食べていかれますね」

 カレーの間におかずを食べれば味の変化も楽しいし、カレーと混ぜてももちろん相性抜群。そして何より楽しいのは、噛むたびにホールスパイスの個性的な香りが口のなかで広がるところだ。

「パウダーではそういう楽しみがないんですよね。ホールスパイスを丸ごと使っているのは、香りの七変化を楽しめるからでもあるんです」

 う~む、確かに! これは今までにないスパイスカレーの楽しみ方だ。帰り道、口の中にホールスパイスの花椒が残っていたのか、何かの瞬間、香りが開いて自分で驚いた。香りの記憶は残りやすい。これは絶対、『青藍』カレーを忘れられなくなりそうだ。

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

スパイスカレー青藍

店名:スパイスカレー青藍

住:東京都杉並区高円寺北2-41-15
TEL:03-5327-8342
営:11:30~14:00 18:00~21:00
※品切れの場合は閉店が早まることも
休:水