意外に少ない茹で時間
「味噌煮込みうどん」の作り方のコツを聞く前に、まずは作っているところを見せていただきました。
土鍋にオリジナル味噌のスープと鶏肉、油揚げを入れて温めておきます。片手鍋で湯を沸騰させ、そこに自家製のうどんを入れてほぐし、粉を落とす程度、数秒湯がいたら、さっとザルにあげました。うどんはまだ硬そうです。そのうどんを土鍋に入れてグツグツ煮立て4分ほど。卵を割り入れ、ネギ、かまぼこを入れて出来上がり! 想像していたよりもはるかに煮込み時間が少ない気がします。

「煮込みと言う名前がついていますが、実はあまり煮込まないんですよ。鍋焼きうどんや一般のうどんと比較すると、煮る時間は少し短いですね。煮込みすぎると最大の特徴であるうどんの“硬いコシ”がなくなってしまい、ボテボテしてしまうからです」という岡田さん。
そう、名古屋の“味噌煮込みうどん”は、煮込むことに特徴があるのではなく、八丁味噌の濃厚なスープが、硬いコシのある麺に適度に染み込んでいることが大事なのです。
「ですからポイントは実は麺にあるんですよ」と、製麺方法を教えてくれた。

真水でこねて寝かさないうどん

「一般的なうどんの製麺方法は、小麦を塩水で打ち、数時間〜半日ほど寝かしてから(熟成)、“のし”て切り、麺にします。一方、味噌煮込みうどんの場合は、塩が入っていない真水を使って打ち、寝かすことなく、30分ほどラップなどで密封してから、そのまま“のし”て切って使うのです」
その違いを詳しく聞いてみると……
「塩水入りの麺は、塩が小麦の中のタンパク質を変化させます。そのため熟成が必要で、それによってもっちりとした弾力あるコシが出ます。その代表が讃岐うどんです。味噌煮込みうどんの方は、こうした弾力系のコシではなく、硬くて“ごわごわ”としたコシを楽しむうどんなんです。ですからむしろ、塩も熟成時間も要らないんです」
また、塩入りのうどんを使ってしまうと、茹でる際に、塩を抜くための時間が必要になり、どうしても茹で時間が長くなったり、塩をきちんと抜かないと、味噌味のスープに沁みてしょっぱくなりすぎるとも。
つまり、名古屋風の味噌煮込みうどんに近づけるためには、塩入りではないうどんを入手することが決め手になるのです。
「しかし、市販では塩が入っていないうどんはほとんど売っていません。だから、本格的に作りたいなら、家庭でうどんを打つことが一番の近道なんですよ。大変そうと思われるかもしれませんが、むしろ水と粉しか使わないうえ、寝かさないので、案外簡単なんです」
そこで、自宅で作る方法を教えてもらいました。分量は2人前です。
【1】うどん作り
材料は中力粉と水。粉に対して水はその半分で、2人分の場合は、粉240㏄、水120㏄。合わせて練って、馴染んできたらこねて塊にし、ジップロックなどに入れて30分経ったら棒でのばして包丁で切って出来上がり。保存する場合はジップロックで密封して冷蔵庫へ。
【2】スープ作り
日高昆布、干し椎茸を水700㏄に入れて戻してからそのまま火にかけます。味が出たら日高昆布、干し椎茸を取り出し、そこに鰹節を入れて出汁を引きます。ちなみにお店ではカツオ、ムロアジ、サバの混合節を使っているそうです。
【3】練り味噌作り
練り味噌の材料は、八丁味噌120g(八丁味噌等の赤味噌がなければ信州味噌か仙台味噌)にみりん大さじ1杯弱、砂糖小さじ1杯弱を入れて伸ばして練ります(ちなみに1人前の場合は八丁味噌80g、みりん大さじ1/2、砂糖小さじ1/2)。この練り味噌は田楽や味噌カツにも応用できます。

3つの仕込みができたら、いよいよ本格的な名古屋味噌煮込みうどん作り!
2人分を作る場合を紹介しましょう。
1.だし600㏄に練り味噌2人分をとく(味噌を濾した後のガラは捨てる)
2.弱火にかけ、鶏肉と揚げ(お好みの量で)を加える
3.だしが沸く直前に下茹でしたうどんを入れる
4.だしの沸騰が保たれる程度の弱火で4分ほど煮込む。この時うどんが鍋肌に焦げ付かないよう適宜、箸で混ぜる
5.最後にネギ、卵、かまぼこを入れ、蓋をして少し蒸らして出来上がり

いかがでしょうか。思ったより簡単そうですね。
お店では、定番の「味噌煮込みうどん」の他に、「キムチ煮込みうどん」「インディアン味噌煮込みうどん」「イタリアン味噌煮込みうどん」の全4種類があり、基本の練り味噌に、オリジナルのキムチソース、カレーソース、トマトソースをブレンドして色々な味を提供しています。
「八丁味噌を使うと、コクと独特の酸味が出ます。トッピングには、天ぷらや豚肉、エビ、キノコ類、お餅など好きな具材を入れたり、チーズやトマト、キムチを入れたりするだけでも簡単に味の変化を楽しめると思います」と岡田さん。ぜひ、トライしてみて!
(取材・文◎土原亜子)
●SHOP INFO

店名:酒と味噌煮込み 味噌煮込罠
住:東京都文京区本郷3-31-15
TEL:03-3812-2286
営:11:30~14:30、17:30~22:00
休:日祝
http://misonikomin.net