トリュフの香りにテーブルが騒然となる

そんな緊迫感の中、ふいに背後から小さなカゴが置かれた。恐る恐るカゴの中を覗くとそこには、小さなバゲットが一切れ。
振り向くと店員の方が、「テーブルにある黒トリュフのオリーブオイルとトリュフ入りの塩、お好みで黒トリュフ風味のバルサミコ酢をお使いになって、トリュフの香りを存分にバゲットにつけてお召し上がりください」と言う。すべてオリジナルのようだ。
これらの調味料は相席の参加者たちと共有するらしい。そこで私が、率先してトリュフオイルの蓋を開けた。途端に、ふわ~っとトリュフの香りが立ち上る。思わず3人で、顔を見合わせる。「す、すごい」「強烈ですね」「充満しましたね」と、我がテーブルはちょっとした騒ぎになった。
しかし、この濃厚な香りを、どう表現すればいいのだろうか。これまで嗅いだトリュフ風味の何千倍も芳醇な香り。シイタケでもない、エリンギでもない、マツタケでもない。「トリュフの香り」としか表現できない。
ただ、この香りのおかげで若い彼女たちとの距離が縮まった。
「ここは、自然の力を大事にして育てたトリュフにこだわっているみたいです」
「トリュフは収穫する季節によって風味や特徴が違うそうです。ここでは、季節ごとのフレッシュな味を楽しめるんですって」と教えてくれたのである。ありがたい。